110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

目から鱗が落ちる

YouTubeは音楽を学ぶには最適な環境だと思う。

様々なプレイヤーの画像を見ることができるので、たまに思わず目から鱗が落ちる状況を目にすることがあるのだ。

私は随分長い事、スティール弦のアコーステックギター(鉄弦)を弾いている。

弾き方が指弾きなのでクラシックギターは習ったこともないのだが、右手の使い方に関しては、クラシックギター教則本などを参考にしている。

同様に、右手の使い方は、スティール系で上手い人の右手よりも、クラシックのギタリストの右手(指?)の使い方を最近は穴が開くほど見たりしている。

さて、本日のお題だが、このクラシックギターの曲の中でも1,2を争う名曲として「アルハンブラの思い出」というのがある。

ギターに詳しい方ならすぐに思い当たるだろう、この曲の面倒なところは「トレモロ」奏法というものを使うことなのだ。

細かい事なのだが、これは、一つの弦を異なった指で弾くというもので、具体的には、冒頭のフレーズは、親指で低音弦(5弦開放弦)を弾くとすぐその後、薬指(2弦5フレット)、中指(2弦5フレット)、人指し指(2弦5フレット)と、高音弦側は同じ音を別の指で次々と弾く奏法だ(ご存知の方はここは飛ばしてくださいませ)。

こういう弾き方はどういう効果があるのか?というのが、ギターに関係ない方の素朴な疑問だと思うのだが、それは、ギターというのは、長く続く音(ロングトーン)を出すのが苦手な楽器で、そのロングトーンを出す代わりに、同じ音を細かく続けて弾くこと(トレモロ)で、ロングトーンが出ている様な錯覚を起こさせる効果を狙ったものなのだ。

更に付け加えれば、ロングトーンを出す楽器の中でも、例えば、バイオリンやサックスなどは、ロングトーンの途中で音を強くすることができるのだが、弦を弾(はじ)く構造のギターでは一般的に音は減衰するしかない、しかし、このトレモロ奏法ならば、途中で、音量を変えることが出来るので、そういう、表現力の拡大にも期待が寄せられるのだ・・・

しかし、自分の手をじっと見ても思うのだが、この、違う指で同じ音を出すというのは、意外に過酷な条件で、特に、動きの悪いと言われる薬指をコントロールするのは至難の業だ(でも、プロの中にはそんなこと微塵も感じさせない人も多数存在する)。

ここからが本題なのだが、Ana Vidovic という女性ギタリストが弾くアルハンブラの思い出」画像を見ていて、ふと「薬指が動いていない」ことに気づいた、カメラの角度が変わって右手のアップになったところ、やはり動いていない。

そう、彼女は、(私が)常識的だと思い込んでいた、親指、薬指、中指、人差し指の順番の運指を変えたのだ、親指、中指、人差し指、中指、の組み合わせか、親指、人差し指、中指、人差し指のいずれかだろう。

なんでそんなことに時間を使って書くのかという方も結構いることだろう。

一つ目の理由は、昔ながらの(伝統的)運指を守ることよりも、音がよりよく出る方法を選んだということ、薬指は弱い指なのでやはりコントロールしにくいはず、だから、他の指の負荷は上がるのだが、出る音を重視して、(芸術的な視点から)新しい運指にしていること。

二つ目の理由は、一つ目とも重なるのだが、一般的な運指でない方法が問題なく受け入れられていること、すなわち、一般的な楽譜にも付いている伝統的な運指と違った方法で弾くことに寛容であることがとても素敵な事だと思ったこと、たとえば、彼女の演奏は認めるけれども、運指が伝統的でないという理由で画像から排除する理由としてはあり得ると思ったからだ、しかし、そうならずに残されたところにちょっと感心したのだ。