110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

深沢七郎(ちくま日本文学全集)

最近読書の量が減った、加齢によるものか、実際のところはよくわからない。

ベッドの横に積み上げてあるものでも百冊は下らないので、ここにあるのだけでも読むのに数年間掛かるほどの体たらくだ。

まぁ、その代わり、少しづつ気になる作品を読むようにはなった。

深沢七郎は以前もいくつか全集のうちから読んだりしている数少ない小説の作家だが今回はちくま日本文学全集版で読む。

いくつか重複したものもあるのだが久しぶりに読むとやはり感慨深いものがある。

楢山節考」は有名で読まれた方も多いのではないかと思うのだが、作者の深沢七郎氏は(あの)おりんさんを愛してやまないと聞くと、違和感を持たれる方も多いのではなかろうか?

今村昌平氏が映画化していたのだが、あの解釈は優れていると思うが、作者の想定とは異なるはずだ。

現在は世代間対立が顕著になってきていると思う、いわゆる少子高齢化で、高齢者をバッシングする声やコメントも随分拝見した。

その中に「楢山節考」的な考え方をする向きがあるのだが、あの作品の表面的な部分と作者の考え方のずれがどうも鼻についてならない。

例えば、本書にある「極楽まくらおとし図」を読んだ時にそういう方々はどう感じられるのだろうか?

私もほどなく老境に入る、だから、深沢氏の描くあの感覚はなんだろうか…と、考えざるを得ないところにあるのだろうね。

遅咲きのデビューと言い、唯一無二の世界観と言い、ふとカフカという名前を思い浮かべた。

人間の深淵を覗けてしまう奇特な人も晩年世の中を儚んでいたと聞く、そこに今も棲み続けることとは、果たして…?