110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

日本のデジタル化の課題(問題)をきちんと指摘する良い記事

 例えば、スマホの普及率が高いから、デジタル化の適応率が高いわけでもない。

昔から、パソコンでインターネットにアクセスしてきた者としては、スマホの普及で、アプリ(ソフト)の使い方は良く知っているのだが、その背後で何が動いているのかを、よく知らない人が大量に存在することが怖いのだ。

そして、政府のデジタル関係の信頼度については、私は殆どない、確か、年金関連の情報漏洩のために最大限セキュリティを強化した官庁内のシステムが使われないままに廃棄された記事を読んで、とりあえず「お仕舞い」としている。

まぁ、そのうち、国民との信頼関係は度外して、強制的に国のシステムを使わせるようにはなるだろうね。

この記事に対して大爆笑したコメントは、マスコミが事件が起きるごとに大げさに報道するから、広まらないんだ、というのがあったのだが、お粗末なデジタル関連に対する政府の知見を考えれば、大げさに報道した方が、よっぽど犯罪などの抑止効果があると思うけどれども、どうかな?ドコモ口座事件なんてのもあったよね。

世界ランク1位「デンマーク電子政府」と日本政府の重大すぎる違い
11/5(木) 11:16配信

ワンクリックで離婚が成立するなど、デンマーク電子政府が注目を集めている。北欧の政策に詳しい明治大学教授の鈴木賢志さんは、「電子政府を加速させるポイントは高い技術力とは限らない」と指摘する。デンマークにあって日本に欠けているとても重大なこととは――。

■素朴で田舎っぽいイメージの国がなぜ
 ブルートゥース(Bluetooth)」をご存じですか?  スマホにコードレスのイヤホンをつないだり、コンピュータにコードレスのマウスをつないだりする時にお世話になっている、あれです。それでは、なぜ「ブルートゥース」と言うのかご存じですか?  実はこの言葉は、1000年以上前のデンマークの王、ハーラル1世に由来しています。彼には神経が死んで青くなった歯があったようで、そのことから「ブルートゥース=青歯王」と呼ばれていました。彼は分裂状態にあったスカンジナビア半島を平和のうちに統合したことで知られており、アメリカのインテルスウェーデンエリクソンフィンランドノキアでバラバラだった無線規格を統一するプロジェクトを彼の偉業になぞらえたというわけです。
 そんな偉大な王の子孫である現代のデンマーク人たちは、今やそのIT分野で世界に名をはせています。国際連合が2年に1度実施している「電子政府調査(e-Government survey)」において2018年、2020年と連続で、世界で最も電子政府が発達している国に選ばれました(図表1)。
 けれども、正直なところデンマークに対して「高度なIT技術」のイメージを持っている日本人は、それほど多くはないでしょう。実際、デンマークから日本への主な輸入品は、豚肉、乳製品、医薬品であり、電化製品などはむしろ日本からデンマークに輸出しています。私が持っているデンマークの印象も、機械的というよりは、自然・農村といった、素朴で田舎っぽい感じです。

■高度な技術よりも重要なポイント
 デンマークの例から私たちが学べることは、電子政府を進めるに当たっては、必ずしもその国に高度な技術を開発する力が求められるわけではない、ということです。その代わりにデンマークが持っているのは、国民の個人データを扱う政府への信頼感、そして他人のデータを盗んで悪用しないであろうという社会への信頼感です。
 このことは、1位のデンマークのみならず、4位フィンランド、6位スウェーデンといった北欧諸国がランキングの上位に名前を連ねていることと無関係ではありません。
 図表2は、ISSP(国際社会調査プログラム)の2017年調査において「あなたは、他人と接するときには、相手の人を信頼してよいと思いますか。それとも、用心したほうがよいと思いますか。」という質問に対して、「いつでも、信頼してよい」「たいてい、信頼してよい」と答えた人の割合ですが、ここでも北欧諸国が上位を占めているのは、決して無関係ではないと思います。またこのことは、北欧諸国における高福祉高負担のシステムにも通ずるところがあります。強権的な政治が行われているわけではないのに税率が高いのは、政府が税金を公正に使うという信頼に基づいていると考えられるからです。

■国民の政府への信頼がなければ第一段階止まり
 さて現在、菅政権は平井卓也デジタル改革相や河野太郎行政改革・規制改革相を中心として、精力的に政府の電子化に取り組んでいます。とかく前例主義に陥りがちな行政組織を変えていくには相当なエネルギーが必要とは思いますが、曲がりなりにも大臣が指揮命令権を持っているわけですから、行政組織の電子化は、今後それなりに進んでいくものと予想されます。
 けれども行政組織の電子化は、政府の電子化の第1段階に過ぎません。政府の電子化を行政サービスの利便性につなげるためには、やはり行政サービスの利用者である国民が、政府そして社会をどれだけ信頼できるかというのが、やがて大きな課題となります。
 デンマークにおける政府の電子化の事例で、私がとりわけ重要だと思うのは、その利用を国民に義務付けているところです。具体的に言うと、デンマークでは全ての市民に対して電子署名システム「NemID」の使用を義務付けています。また15歳以上の全てのデンマーク市民に対して、障がいなど特別な免除要件に当てはまらない限り、政府との連絡ツールとなるデジタルポストの利用を義務付けています。この結果、2018年においては国民の91.1%がこのデジタルポストを使用し、1億4000万通のメールが送受信されています。

■高齢者が多くても機能する理由
 デンマーク政府によれば、電子政府化によって行政手続きの時間は約30%短縮し、年間3億ユーロ(約370億円)の経費が削減されたとのこと、これを人口が約20倍の日本に当てはめれば、約7000億円の経費削減ということになります。
 「いや、そうはいっても日本にはそもそも機械が苦手なお年寄りが多いから……」という声も聞こえてきますが、日本ほどではないにせよ、実はデンマークも65歳以上の高齢者の割合が世界で11番目に高い国です。それでもこの仕組みが機能していることの背景には、「政府が社会のためにやりましょうというのだから、私も頑張って馴染むようにしよう」という、信頼に基づいた社会への貢献意識があるのではないかな、と思います。
 私は、日本にも善意や信頼があふれていると思っています。よく「日本では、財布やスマホを失くしてもちゃんと戻ってくる」という話を聞きますし、そのことを誇りに思う日本人は多いのではないでしょうか。ところが、それでも他人を信頼できると考えている日本人は多くありません。悪人や犯罪はゼロではありませんが、それはデンマークとて同じことです。何事にも用心することは大切ですが、私たちは、私たち自身の社会にもっと自信を持ち、社会を信頼することによって得られるメリットを積極的に追求するべきではないでしょうか。これがデンマークの「すごい電子化」に日本が学ぶことのできる教訓であると、私は思います。
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鈴木 賢志(すずき・けんじ)
明治大学国際日本学部教授・学部長
1992年東京大学法学部卒。英国ウォーリック大学で博士号(PhD)。97年から10年間、ストックホルム商科大学欧州日本研究所勤務。日本と北欧を中心とした比較社会システムを研究する。
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明治大学国際日本学部教授・学部長 鈴木 賢志