110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

GDPでいいの?

 GDPを経済指標の一つとするがそれは実態を的確に表しているのだろうか…という指摘は面白い見解だと思う。

コラム:相次ぐ下方修正、成長予想に楽観的過ぎる理由
Edward Hadas
[ロンドン 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
世界的に経済成長率見通しが下方修正されつつある。しかしエコノミストが予想を誤ったのには根本的な理由があり、驚くに当たらない。
国際通貨基金IMF)が好例だ。昨年4月には2019年の世界の成長率見通しを3.9%としていたが、今年1月には3.5%まで下方修正した。
IMFは下方修正の原因として、貿易摩擦や金融環境の引き締まりを指摘。またベレンバーグ・エコノミクスは英米の政治的膠着、ポピュリスト政権のお粗末な経済政策、米国の信頼が低下する可能性などに懸念を示している。そしてすべてのエコノミストが、中国経済の減速を心配している。
しかしこれらの要因の多くは以前から分かっていたことで、下方修正の理由の一端しか説明できない。
それより大きな原因は、エコノミストのモデルが世界経済の大きな潮流に順応できていないことだろう。
第一に、GDPは生活の質の向上を捕捉しにくい統計だ。もともと、自動車、セメントなど伝統的な大規模工場での生産を合計するために設計されている。情報通信技術の進歩や公害の削減、健康状態の向上などが生み出す価値の多くを捕捉するには、あまりにも粗っぽい。先進国においては、こうした無形の生活の向上が新たな経済活動に大いに寄与している。GDPは時代遅れなのだ。
一方、発展途上国の統計機関は一般に、闇経済が生み出す生産増加を把握し切れていない。また、小規模企業や農家の生産性向上がもたらす大幅な生活の向上が、GDPの計算から漏れる傾向がある。
この結果、先進国、発展途上国はともに「認知的不協和」とも言うべき状況にある。GDP統計は経済に関する良いニュースを見落としがちなのに対し、労働者の熟練や資本ストックの拡大を観察している専門家の方は、それらが統計に算入されていると期待する傾向がある。
人口動態の変化も、予想が外れる一因かもしれない。エコノミスト出生率が低下していることは知っているが、その影響を過小評価している可能性がある。子供の数が減れば住宅は小さくなり、インフラ投資は減り、GDPを増やすような職業への時間やエネルギーの注力も減ると考えて差し支えないだろう。
そうであるなら、成長率は持続的に低下していくだろう。ポピュレーションヒラミッド・ドット・ネットによると、ドイツでは10歳以下の人口より40歳以上の人口の方が48%多い。日本とイタリアは、この差がそれぞれ74%、77%に及ぶ。
中国はこの差が39%だが、まだ消費の勢いが衰えていないようだ。しかしIMFによると、1人あたりGDPはドイツの36%に過ぎない。
中国政府は年率6.5%の成長が続くと予想しているが、エコノミストはこの「願望」を信用すべきではない。多額の債務、汚職の蔓延といった成長圧迫要因を別としても、高中所得国の仲間入りを果たした国の成長が衰えるのは不可避だ。経済が大量生産からサービスにシフトするためには、農業から工業への移行以上に技術と協調体制が必要になる。
エコノミストは資源生産国についても、また別の意味で楽観し過ぎている。石油その他の資源の輸出で得た利益を有効に使えている国は少ない。サウジアラビア、イラン、イラクといった国々で、その社会制度に見合わないような富が創出されると期待すれば、裏切られるだろう。
同様に、発展途上国に関する予想はしばしば、先進国からの金融資本流入の影響や、弱い社会制度を克服する能力に対する過大評価に根差している。資本流入は時に、成長をむしばむような金融、政治危機をもたらすものだ。
こうした潮流が実体経済に及ぼす影響は好悪さまざまだ。経済の向上や生活様式の選択肢拡大を捕捉できなければ、GDPの数値は下がるが、実際の厚生は損なわれない。一方、中国が経済成長に苦労する局面に入ることと、社会制度のもろさは、GDPの数値と実際の生活の質を圧迫し、エコノミストの予想よりも下振れさせるだろう。
しかし債務国に対しては、これらの潮流は一様に問題をもたらす。成長率が予想を下回り続ければ、債務返済負担は増えるだろう。インフレ率が予想外に高まればデフォルトは避けられるかもしれないが、過去30年間、物価は全般に落ち着いていた。
金融危機はいつも悪いタイミングでやってくる。世界的に見てレバレッジは高く、政策金利はなお低く、金持ちの金融家に対する不信感は広がっている。予想の下方修正どころでは済まなくなる材料は整っている。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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