110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

普門館

 最近吹奏楽のことを少し知った似非ファンの備忘録。
 全日本吹奏楽コンクールの舞台で“吹奏楽の甲子園”と呼ばれた、東京・杉並区の「普門館」が12月に解体されます。解体を前に、館内を一般開放するイベントが11月5日から始まり、多くの吹奏楽ファンが訪れています。
 普門館は1970年に完成し、これまで世界有数のオーケストラやバレエ団の公演が行われてきました。1972年からは全日本吹奏楽コンクールの会場となり、“吹奏楽の甲子園”として多くの音楽関係者から愛されてきました。数々の旋律を響き渡らせてきた漆黒のステージは12月、48年の歴史に幕を下ろします。長年親しまれてきた普門館の建物が建築基準法の変化に伴い、耐震強度が足りず使用できなくなったためです。
 解体工事を前に始まった一般開放は、「普門館から感謝を込めて」最後のステージを楽しんでほしいと企画されました。開放初日を迎えた5日は早速、かつて青春の1ページをこの場所で過ごした多くの吹奏楽経験者が全国から訪れました。
 ステージ上では思い思いに、学生時代に演奏を重ねた楽曲を奏でる人々の姿がありました。中学時代に兵庫県代表で出場したことがあるという人は「全日本吹奏楽コンクールでここに立った。中学3年の時だったが、非常に思い出深い。三十数年前のことを覚えていないぐらい。こんなふうだったかなと思いながら眺めていた。当時、それぐらい緊張していたんだなと思った。当時の部活仲間にも伝えたいと思っている。かみしめて楽しみたい」、高校時代に奈良県代表で出場した人は「この舞台に来たら高校生の日々が思い出された。当時はつらかったが、この舞台に立ちたいというのが目標だったので、みんなで頑張った思い出がよみがえる」などと話していました。
 訪れた人の中には、幼い頃からの「憧れの舞台」に初めて立ち、夢をかなえた人の姿もありました。群馬からやって来たという人は「(当時通っていた学校は)強い学校でなく、全国大会に出られるような学校ではなかったが、吹奏楽の全国大会といえば『普門館』だった。建物が解体されることは残念だが、今、このステージに立てたこと、目標とした日々のたくさんの思い出があってよかった」と語りました。
 ステージから5000席の客席を見つめ、カメラのシャッターを切る人の姿も多く見られました。また、舞台の一部には「この舞台を目指し、何度も泣き、そしてこの舞台で最高の笑顔を見せることができました」「11年越しにようやく夢の舞台に立てました。ずっと憧れの場所です。ありがとう普門館」など、普門館への熱いメッセージの数々が書き込まれました。
 普門館はおよそ半世紀に及ぶ歴史に幕を閉じ、新たな“憩いの場としての緑地”に生まれ変わる予定です。普門館・運用担当の熊野隆規さんは「安全第一で、使用停止そして解体という運びになったが、最後の1週間だけは吹奏楽ファンの皆さんにお越しいただき、自由に見学したり楽器を吹いたり、納得いくまで楽しんでもらえれば」と話しています。
 “吹奏楽の聖地”普門館の一般開放は11月11日(日)の午後6時まで実施されます。