110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

小さなものの諸形態(市村弘正著)

 宇野邦一氏の著作を読んでいて、市村弘正氏に、興味を持ったものの、実は、その後忘れていた。
 それが先日、susuayushinさんがコメントを書き込んでいただいたので思い出した。
 読書は、日常の生活と同じく、日々何かが(それが、重要な事であれ、些事であれ)流れていく、そして、そのうちのいくつかを忘れていってしまう。
 だから、その時に、目の前にあることを次々に消化していかないと、もしかすると、二度と巡り合う事がないことになるかもしれない。
 特に、本書にも書いてあったが、『現在の日本の出版状況では、品切れや在庫僅少となった本が新たな読者と出会う機会は限りなく零に近い。・・・(平凡ライブラリー版あとがき)』のように、目の前にある本が「読みたい」のならば、(金銭の問題もあるが)、その場で手に入れないと二度と手に入らなくなるかもしれないのです。
 その様なわけで、このような、マイナーなブログに、コメントを頂いた事と、偶然に感謝したいと思います。

 さて、小さなものは、あらゆる意味で「少数派」を指す、それは、基本的には、自分の考えの及ばない、大きな力(多数派)によって、その地位や存在を奪われるという、ある意味運命を背負ったもの達に焦点を当てている。
 さて、それらのもののは、どう対処すれば良いのだろう、という問いには答えは無い。
 それは、現在、一般的に妥当とされる「多数決」により、結論つけられててしまったからだ。
 しかし、その「多数派」や「多数決」の絶対的な意味での真偽命題、すなわち、「正しい」、「間違っている」の判断は、特に、将来に関わる問題の場合、特定できないものだという事については、多数の事例がある。
 その様な、個々の人、モノ、対象に関して、現在「少数派」になってしまったものを、再発見させてくれるのが本書である。
 そして、「ちいさなものの」視点から問題提起を仕掛けてくる。
 そこには、自然に対する、文明とか文化という、人間が意識するにせよしないにせよ、創り上げてきたものとの対比が浮かび上がってくるように思う。