110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

読書

晩年のスタイル(エドワード・W・サイード著)

本書は岩波書店2007年刊行のもの。 晩年という言葉のから受けるある意味否定的な印象をとらえて、必ずしもそうではないと、光を与えるための一冊。 基本的に、様々な人の晩年の作品を捉えているのだが、ふと、国家や社会にも晩年があるのではないかと思った…

SHOAH(クロード・ランズマン著)

本書は作品社1995年刊行のもの。 長編の映画の一部はどこかで見た記憶があるのだが、9時間半におよぶ本編、全てを見てはいなかった。 それが、このような形で書籍化されていたことを、刊行から25年経過した、今、古本屋で知った。 一も二もなく買って読んだ…

アメリカ様(宮武外骨著)

本書はちくま学芸文庫版で読む。 私はあと2年もしないで還暦だ、だから、昭和の事を考えても良いだろう。 その中で一番大きい事件はあの(15年)戦争だろう。 戦後生まれの私などは、戦争に与した大人たちをまとめてあたかも犯罪人のごとく偏見の目で見てし…

縁の切り方(中川淳一郎著)

本書は小学館新書2014年初版のもの。 表題からは現代風の軽いものかと思ったが内容は実にしっかりしていた。 簡単に他人とつながれる社会だからこその「縁の切り方」について書かれた本だ。 著者は私より一回り年下なのだが物凄い人間関係の修羅場を生きてき…

思ひ出すことども(森銑三著)

本書は中央公論社昭和50年刊行のもの、氏の著作集の月報に書かれた同名の連載に大幅に加筆された回顧録。 私としては、森銑三と言えば、柴田宵曲、山本夏彦と書いて、ご存知の方の失笑を頂戴しよう。

道徳情操論(アダム・スミス著)

本書は未来社から上下巻で刊行されたもの、上巻は昭和44年初版、下巻は昭和45年初版のものだ。 アダム・スミスという名前や人、著作は多分誰もが習っていたり知っていたりする。 しかし、その著作、例えば国富論を読んでみたという人はどれくらいいるのだろ…

遊学(松岡正剛著)

本書は大和書房1986年刊行のもの、確か、現在は文庫版で買えると思って調べたらkindle版でも入手できる。 文庫版はオリジナルを古書で入手したよりも安く手に入ることがわかり、少しショックだ。 しかも、kindle版まであるとは・・・絶句してしまう。 何故その…

波多野精一全集

波多野精一全集を読む、これはBookOffにあったもの、全冊揃っていたかも確認せずに購入したもの、状態は良くなく、結構積んだままであったのが、このままではいけないと思い読み始めた。 全部で5冊あったのだが、全集と名前がついているので、冊割れはしてい…

世紀の空売り(マイケル・ルイス著)

本書は文春文庫版で読む。 あのリーマンショックに関するノンフィクション小説。 金融業界の崩壊を予測した人たちを追いかけたもの、彼らは、金融崩壊により大金持ちになったのだが、その後味は必ずしも良いものとは言えなかった。 確かに、市場の不正を正し…

石に書く(大森実著)

本書は潮出版社昭和46年初版のもの。 ヤフオクで長い事売れずにいた本であった、ほとんど送料という体で入手したのだが、これは凄い本であった。 真実を書くという事が、これに政治が絡まると、これほど難しいことになるとは予想もできないことだ。 今の私た…

平成最後に落札した本とは

どうも本日をもって平成は終了のようだ。 こんな日にも(まぁ)ヤフオクで本を落札した、その本は、山川菊英のものであった(2冊)。 彼女は有名な婦人運動家でもあった。 戦争が終わり、経済的も発展し、平成になってからは一度も戦争をしなかった。 でも、…

人間、この非人間的なもの(なだいなだ著)

本書は1972年筑摩書房より刊行されたもの、私は1985年初版のちくま文庫版で読む。 なだいなだのエッセイ集ということで軽い気持ちで読んだのだが、各エッセイが書かれた時よりほぼ半世紀が経った今、私が漠然と不安に思っていたことが、この作品の中に既に描…

戦争が遺したもの(鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊英二著)

本書は新曜社2004年刊行のもの。 昭和という時代がとても遠い時代の様に思われる時がやってくる。 そして、その昭和という時代がざっくりと戦前戦後と分けられることにあまり異論はない。 しかし、戦後生まれとしては、どうもその戦前というヤツがここにきて…

日本人は民主主義を捨てたがっているのか?(想田和弘著)

本書は岩波ブックレット2013年刊行のもの。 結論から言えば、既に日本は民主主義ではない、少なくとも現政権では、これはどうしようもない。 また、本書でも取り上げられている「憲法改正」については、現自民党案が採用されるのならば、戦前生まれの母親が…

辻まことの世界

本書はみすず書房刊行のもの「辻まことの世界」は1977年初版、「続・辻まことの世界」は1978年初版。 今頃になって読む、Amazonの評価をみてもこの著者の評価は高い、そういう年齢の人が読んでいるからなのかも知れないのだが、一読してみると面白さが分かっ…

ひょうすべの国(笙野頼子著)

河出書房新社2016年刊行のもの、TPP反対小説ということらしいので読んでみた。 TPPの危険性については細かく調べると分かってくるのだが、とりあえず、日本は参加ということになる。 現状、一番良かったのはアメリカが参加を取りやめたことだろうね。 それに…

安倍晋三と岸信介(大下英治著)

本書は角川SSC新書2013年第1刷のもの。 私は安倍さん嫌いだということはずっと書いているのだけれども、でも、こういう本は読んでみるべきだとは思っている。 でも、本書の冒頭のインタビューでとんでもない見解が並んでいるのを見て、読むのを止めようかと…

月(辺見庸著)

本書は角川書店刊行のもの、新刊で入手した。 まず、読んでみることをお勧めする。 正義とか善とかを簡単に言葉にできる人もいるのだが、それがとても空しいことに気づいて欲しい。 左様に、この日本も慌ただしくざわついている。 前にも書いたが、私の寿命…

告白(井口俊英著)

本書は文春文庫版1999年第1刷のものを読む。 著者は1995年大和銀行巨額損失事件の当事者で、彼の目から見た本事件のまさに告白である。 実は、本書について初めは気にならなかったのだが、ふと手にしてみると、当時はあまり興味のなかったこの事件について、…

危機の外交(東郷和彦著)

本書は角川新書2015年初版のもの。 私は、外交のことその怖さを、知らない、もしくは、知らされていないことに気づくのだ。 本書のはじめにこんな文章が出てくる「歴史問題でいま最も日本が考えねばならない難しい問題は、靖国でも慰安婦でもない。一二年の…

打ちのめされるようなすごい本(米原万理著)

本書は文藝春秋2006年第1刷刊行のもの。 また、文庫版も出ている。 蛇足なのかもしれないが、この年に著者は亡くなっている。 本書は著者が書いた書評を集めたもの。 そこで、表題の「打ちのめされるようなすごい本」とは、丸谷才一の「笹まくら」のことを指…

ひめゆりの塔をめぐる人々の手記(仲宗根政義著)

本書は角川文庫版で読む。 少し前にも書いたが、平成が来年で改元される、昭和という時代のことも随分と昔語りになってしまような気がする。 もう忘れたい記録としての「あの戦争」について、やはり忘れてはいけないのではと思いはじめたのがつい最近のこと…

東条英機処刑の日(猪瀬直樹著)

本書は文春文庫版、「ジミーの誕生日(文藝春秋/単行本)」を文庫本化に伴い改題したもの。 昭和は今から考えるといろいろな事が起こり過ぎた特殊な時代だっのかもしれない。 それも、今や、元号も平成に変わり、来年には、それも、変わってしまう。 本書は…

塙新書

たまたま、BookOffの100円棚に3冊ほど置いてあったので買ってみたら、意外と良い本であった。 「意外と」というのは失礼なんだろうな、安く買えるのならば買って損はなさそうなシリーズだと思う。 今後も安く見かけたら買いたいのだが…この前はじめて見たぐ…

誇り(木村元彦著)

本書は集英社文庫版で読む。 ドラガン・ストイコビッチに関する本だ。 彼が名古屋グランパスエイトで活躍したことは知っていたが、その当時、今ほどサッカーに興味はなかった。 そして、ユーゴスラビアという国の不幸も無視していた。 それが、先のW杯の(皮…

政府は必ず嘘をつく(堤未果著)

本書は角川新書2016年の増補版の方を読む。 最初際物かと思ったが内容はしっかりしていると思う。 最近の読書で(古本を読むのでタイムラグがもの凄くある)、国内のあの福島原発事故報道や、シリアなどの報道には疑問を持っていたので、その指摘がしっくり…

東京裁判をゼロからやり直す(ケント・ギルバート/井上和彦著)

本書は小学館新書2018年2月刊行のもの。 結論としては、本書は100円で入手した、早速、この手は売れないと判断したこの古書店の慧眼を称えるべきだろう。 本の内容はとりあえず置いておいて、東京裁判をやり直すなんていう見解が気にくわない。 戦後の一時期…

砕かれたハリルホジッチ・プラン(五百蔵容著)

本書は星海社新書2018年5月に刊行のもの。 ハリルホジッチの解任はやっぱり解せない、という人が多かった時に合わせて出版されたものだろう。 なんとも言いようのないロシアW杯の日本代表が(方法はどうあれ)予選を突破したので、ハリルのことは世の中一般…

言ってはいけない(橘玲著)

本書は新潮新書2016年刊行のもの。 頭の良さ、犯罪を起こす可能性、これは遺伝による相関が高い、後天的な要素は有意に排除できる。 冒頭にある「これは不愉快な本だ」というのは、私たちが「もしかすると努力で克服できるかもしれない」という夢を打ち砕く…

憲法改正のオモテとウラ(舛添要一著)

本書は講談社現代新書版。 2005年の第一次草案立案の主力の一人でであった著者がその時の苦労を描いたもの、帯に「憲法改正とは政治そのものである」と書いたあるが、そのことが理解できたような気がする。 そして、最期に応用編としてなのか補足なのか、201…