110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

告白(井口俊英著)

 本書は文春文庫版1999年第1刷のものを読む。

 著者は1995年大和銀行巨額損失事件の当事者で、彼の目から見た本事件のまさに告白である。
 実は、本書について初めは気にならなかったのだが、ふと手にしてみると、当時はあまり興味のなかったこの事件について、一度読んでみようかなと思った、当然、108円だったしね。

 でも読んでいると面白かった、多少文章がこなれていない感じもあったのだが、なにしろ日本人ばなれしたさばけた文書が心地よいのだ。
 また、彼の青年時代のアメリカでの生活が、昔(かつて)の日本の姿を著していて興味深く読んでいた。
 最近は、日本はこんなに凄いんだ見たいな、変なナショナリズム、もしくは、根拠のない懐古主義が見受けられるが、実際にそんな(魔法みたいな)ことはなくて、やっぱり最初は粗悪品を作りながらも、一生懸命品質を上げていった経緯が見えてくるのだ。
 だから、中国の品質が悪いなんて言っていると、気づいたら立場が変わっていたりするんだよね、気を付けないといけないよね。

 また、大和銀行の対応の悪さは、なんというか、先の、厚労省の統計問題のような無様な対応を思い出させられて仕方がないんだよね。

 著者は頭取に対して彼のやったことを告白状として送った、それは、彼の日本的な心情として、アメリカの当局に露見した場合の不利益を最小限に抑えたいという「愛社精神」であったのだが、国内業務しかわからない頭取や取締役は、その告白状の真意をくみ取ることはできなかった。
 そのため、対応を間違ることにより、事件はエスカレーションし、アメリカの司法対象として大和銀行は有罪となり多額の罰金とアメリカからの業務撤退を余儀なくされたんだ。
 それは、本来、的確な判断・対応する能力を要求されるはずの役員連中が、そのスキルを持たなかったからだね。

 地位に高い人がいると、その肩書に、単純におそれを抱くことがあるのだが、冷静に考えると、何か事件が起きた時に、それに対応できる、能力がある人なのか、はたまた、出世するスキルが高いだけの人なのかは、外見からはわからないよね?
 
 日本ていう国も、この大和銀行のように多額の負債を隠蔽しているなんてことが、(まずもっては)ないといいよね、で、もしあっても、露見しないといいよね…あ、違うか。
 あと、窮地に陥っても、対応できる能力があれば、一番いいよね。
 (少子高齢化の傾向はかならず何かの事件があるってことだよね、たとえば、移民の公然とした受け入れなんて、前代未聞だよね)