110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

安倍晋三と岸信介(大下英治著)

 本書は角川SSC新書2013年第1刷のもの。

 私は安倍さん嫌いだということはずっと書いているのだけれども、でも、こういう本は読んでみるべきだとは思っている。
 でも、本書の冒頭のインタビューでとんでもない見解が並んでいるのを見て、読むのを止めようかとも思ったけれどもなんとか読んだ。
 内容は、意外と面白かった、また安倍さんの考え方の一端もわかったので一概に非難だけするわけにもいかにかなぁ…なんて思った。
 
 安倍さんは責任感が強いから、任期全うするまで自分の理想で突き進むことは間違いが無い、それが、後々、自国に不利になったとしてもそんなことは(現在では)問題としない、そこが、ちょっと怖いところだ。

 ちなみに、本書はバラ色の将来を予想されるようなハッピーエンドで終わっている。
 しかし、どうも現在の状況から見ると何かきな臭い。
 第二次安倍内閣の最初の組閣は本書の記載を信じるならばとても優れたものであったようだ、内政、外交のバランスも申し分なく、各役職がそれぞれ優れた手腕を発揮していたようだ。

 ところが、最近は、大臣もそうだが、各省庁(官僚)のパフォーマンスが悪い様に思えるのだ、単純なスキャンダルから辞任へ追いやられる程度の低いものから、先の統計問題のような信じられない醜態まで、この時期に露見している。
 外交は、昨年は、米朝会談から拉致問題の解決などという期待もあったが、最近は、韓国との対立から有力な窓口が閉ざされたような状況になっているように見える(これらは、国内の沖縄問題も含めて、歴史的な課題がここにきて浮上しているのだと思う)。
 また、本書でも一つの柱としていた教育問題も余り良い状況では無いように思う、官僚の劣化という言葉を最近聞くが、政府主導で政治を行った反動なのかもしれないし、そもそも、もとより、官僚に実力が無く、それを隠し切れずに露見してきたのかもしれない。
 さらに言えば、少子高齢化の影響が顕在化してきたのかもしれない(比喩的だが、国自体が老いたということ)。

 まぁ、そういう不安要素もあるが、冒頭の様に安倍さんは最期までやり続けるはずだ、だから、何か怪しいところもあるが、後々に致命的になる政策だけはとらないで欲しいと願う以外にないのだ。
 この国には対立する野党すらないのだから…
 そして、それはこの国の多数決できまったことなのだから…

 ちなみに、2014年に本著者は「日本共産党の深層(イーストプレス)」という本を出している、前後して読んだのだが、こんな正反対のネタで良く書けるなぁと感心したというか、恐れ入った。