110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ロシアは勝てなくとも負けない

news.yahoo.co.jp歴史という時間軸を考えるとそうなるかもしれない。

ロシアは勝てなくとも負けない

6/2(金) 11:03配信
ニュースソクラ
【ロシア・ウクライナ戦争】いずれロシア系住民はロシアに行かざるえない
 5月9日、対独戦勝記念式典の冒頭。リムジン車上に立つショイグ国防相が十字を切ると、車はゆっくりと赤の広場へ進み出た。
 式典のはじめに国防相が十字を切る。そんな光景を見るのは、はじめてだ。
 ロシアは「本当の戦争」のさなかにある。しかも、どうやら苦戦を強いられている。米国と北大西洋条約機構NATO)は膨大な規模の兵器を与えてウクライナを援護する。
 西側の結束は固く、制裁も効いている。ロシア財政は原油輸出収入の減少と戦費の増加で苦境を呈している。
 2022年10月のモスクワ訪問時、この戦争について語りながら、友人は声を詰まらせた。
 プーチン大統領が、多くのロシア国民の望まない戦争を始めてしまったことは明らかだ。しかし同時に、その友人は力を込めてこうも語った。
 「クリミアは歴史的にも、現実にもロシアのものです」
 また、別の友人は、ウクライナマリウポリで暮らす妻の弟家族がウクライナ民兵団から受けた仕打ちについて語った後、言葉の意味を確かめるようにこう付け加えた。
 「彼らがやっていることはファシストと変わらない。ファシストそのものです」
 他方、侵攻以来、西側企業の撤退で解雇されたロシアの現地人の多くが転職先として選んだのは、他でもない、政府系のロシア企業(要するに軍需産業だ)なのだという。中国企業も多いという。
 この戦争がどういうふうに終わるか、そこはまだわからない。
 だが、反戦論者の多くはいまでは国外へ去り、ロシア社会は戦争支持でいっそう結束していくように見える。経済が行き詰まっているようでもないし、プーチン体制が揺らいでいるとも思えない。
 G7広島サミットでは、ウクライナのゼレンスキー大統領が支援を訴え、西側はそれに応えて武器の追加供与と制裁強化で一致したが、見方を変えれば、それはロシアが依然として崩れないことの裏返しでもあるだろう。
 ロシアは勝てないかもしれないが、敗けるわけにはいかない。
 結果的に西側は、焦土と化したウクライナの東部と南部の一部を残し(そこではパルチザンによる散発的な戦闘がつづくかもしれない)、かつ事実上NATOの保護下におく形で(防空体制の強化や兵士の訓練などで、それは事実上、すでに始まっている)、EU加盟へ向かわせるのではないか。
 そして、停戦後のウクライナは、旧ポーランド領のヨーロッパ化された人々や、主として中西部に多く住む生粋の独立派に属する人々が中心の社会になり、ロシア人に対して不寛容になっていくだろう。
 ロシア系の住民(言語、ルーツからロシアへの帰属意識の強い人々や、ロシアと経済的なつながりの深い人々)には住みづらい土地になって、やがて彼らは故国であるロシアへ移っていくのではないか。
 かくして、「クマ」はタイガの森へ帰っていく。雪原に血を滴らせながら。
■西谷 公明(エコノミスト 元在ウクライナ日本大使館専門調査員)
1953年生、長銀総研を経て1996年在ウクライナ日本大使館専門調査員。2004ー09年トヨタロシア社長。2018年N&Rアソシエイツ設立し、代表。著書に『ユーラシア・ダイナミズム』『ロシアトヨタ戦記』など。岩波書店の月刊世界の臨時増刊「ウクライナ侵略戦争」で「続・誰にウクライナが救えるか」(2022年4月14日刊)を執筆。2023年1月に『ウクライナ 通貨誕生-独立の命運をかけた闘い』(岩波現代文庫)を復刻。