110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

深沢七郎集第7巻

 本書は筑摩書房刊行のもの。
 「楢山節考」の他、氏の著作は古本でも意外に値がついているのでなかなか手がでないのだが、本書は大学の除籍本で入手したので少し安い、それでも自分としては高いと思う、それだけ人気があることなのかもしれない。
 賛否両論評価も分かれる人だが、私は好きな著者である。

 「楢山節考」については松岡正剛氏の書評が秀逸で深沢七郎という作者を良くとらえていて私はそれ以上のことは書けない、と責任放棄したりする。

 そこで本題だが「楢山節考」に関しては考えていることがある、本書に収められた「言わなければよかったのに日記」に、『ボクは「おりん」のような老婆が好きで、ただ好きでという気持ちだけで書いたのだ』とあるのだ、これと私たちが作り出す作品イメージの差は何なのだろうか?

 それは本書に収録された「民謡漫歩」にヒントがあるのかもしれない。

 「姥捨」のイメージは悲壮感を伴う様に思う、「楢山節考」の映画にはそういう冷たい感覚が漂っているようにも思える、しかし、著者はおりんが好きなのだ、その上で作られた小説に悲壮感があったとしても、そこには何か救い(拙い言葉だね)は無いのだろうか?

 そういうことを思いながら、少しずつ氏の書いたものを読んでいこうかと思うのだ。
 なにしろ、私にとっては高価なのだこの全集、大人買いと言ってもねぇ。