110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

私の「漱石」と「龍之介」(内田百閒著)

 本書は筑摩書房、筑摩選書のうちの一冊、著者の敬慕した夏目漱石芥川龍之介に関する著作を集めたもの。

 小説家・随筆家として名前の知られる著者が、こと夏目漱石に関しては子供のような文書になっている、それだけ敬愛していたことが伺えるのだが、今風に言えば、この著者は漱石のストーカーである。
 それを是とした漱石の懐の広さというところかもしれない。
 ちなみに、本書を読んでいて、ふと深沢七郎を思い浮かべた、まったく異なる二人と言えるが、深沢と政宗白鳥の付き合いになんとなく似ていないかと思ったのだ、きっちりと説明できないけれどね。

 また、年下の龍之介が死ぬ間際まで著者を認め支えたことは大変な美談だ。

 著作家はその作品で評価するということは確かに正論だ、けれども、その生活面からその著者が好きになることもあって良いのではないかと、本作を読んで思った。