110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

「津久井やまゆり園」の建て替え

 この建て替え問題に着目して記事にしたところはとても良い問題意識だと思う、記者の感性を認めたいところだ。
 最初に言い訳をするのだが、私は、障害者施設に関しては経験的にコメントできないので、高齢者の介護や施設利用に関しての(まだまだ十分とは言えないが)経験から類推してコメントしたいと思う。
 以下の記事にもあるように、(居)場所というのは重要な要素がある、お年寄りだと、長年住み慣れた家を、綺麗だからとか効率的だからといって建て替えや住み替えをすると、悪影響が出る可能性がある。
 例えば、突然認知症を発症してしまうことなどだ。
 だから、昨年、私の母親が病院や施設を転々とした時に、その環境が変わるたびに神経質になった。
 事実、入院中に、明らかな譫妄状態になったと指摘されたこともある(1回で済んだけれど、それでもねぇ)。
 私(たち)は、他人には最低でも自分の家や自分の部屋は居心地が良い、行動範囲が狭くなってきた高齢者にとってはかけがえのない落ち着ける場所なのではないだろうか。
 この立場から、視点を転じて、施設に関しても考えてみよう。
 確かに、設立から長年月経っている施設は老朽化が進み、現在の技術レベルから行くと非効率的なところもあるかもしれない。
 しかし、そこに長く住んでいる人にとってはどうだろう?
 住み慣れた家にしろ施設にしろ、その不便に対して自分なりに対応していないだろうか?
 本来ない方はが良いとされる、ちょっとした段差を、なにかの目印にしてたりすることはないか?
 人間がからむことだから、当事者でないと見えてこない部分をおざなりにすると、意外なしっぺ返しに会うことがある。
 繰り返して書くが、私は、障害者施設の経験はないので外れた意見かもしれない。
 しかし、これが高齢者施設について類推することが許されるならば、黒岩知事の考えは浅いと言える。
 行政サイドからは、殺人事件を思い起こさせるシンボルを消してしまいたいのだろう。
 しかし、それ以上に、人々がそこに棲んで(住んで)いることを良く理解しないといけないのではないだろうか?
 ある意味、行政サイドが「人」を見ていないという事を露見したようにも思う。

 ちなみに、この記事のコメントを見ると、残虐な殺人を犯した犯人への批判という、本記事の趣旨から外れたとも思われる感情的なものもあった、もう少し冷静に読み込んでも良いのではないかな?
 黒岩知事に近い目線という事かもしれないね。

相模原殺傷 事件発生から26日で半年 捜査ほぼ終結も、残る課題
産経新聞 1/25(水) 11:11配信
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人が刺殺され27人が負傷した事件から、26日で半年になる。神奈川県は「再生のシンボル」として、園を元の場所で建て替える基本構想を打ち出したが、障害者団体から異論が噴出するなど溝が鮮明に。一方、県警による元職員の植松聖(さとし)容疑者(27)への捜査はほぼ終結し、来月にも横浜地検が起訴の可否を判断する見込みだ。日本を揺るがした未曽有の事件はいくつかの課題を残しつつ、次のステージに向かおうとしている。
 「やまゆり園は、地域にとって特別な場所だ」
 植松容疑者に腹などを刺され、一時重体となった入所者の尾野一矢さん(43)の父、剛志さん(73)はそう語る。やまゆり園の家族会は昨年9月、県に元の場所での全面建て替えを要請。県も容認し、平成32年度末までの完成を目指している。
 地元での説明会も行われ、参加した地域住民らからも「地元はやまゆり園とともに育ってきた」「施設と地域のつながりは深い」などの声が上がった。地域内での園の存続を希望する意見が大半だった。
 県は今月6日、施設の建て替え方針案を公表。最新の防犯設備を導入する一方で、黒岩祐治知事の強い意向で、門や塀を撤去するなど「開かれた園」をアピールした。2人部屋だった居室は個室化。加えて、地域との交流促進のため、体育館やプールなどは積極的に一般開放する方針だ。
 しかし、この方針案に外部の障害者団体からの異論が相次いだ。10日に開催された公聴会では、「地域密着型施設として、小規模施設を数カ所に分けて建てるべき」「大型施設は時代錯誤」「入所者本人の意見を聞くべき」などと批判的な意見が続いた。日本障害者協議会の藤井克徳代表は「物事が早く進みすぎているように感じる」と話す。一方、黒岩知事は「(現地での全面建て替えが)間違っているといわれるのは非常に心外」と不快感を示すなど、障害者団体との溝が浮き彫りになっている。
 指摘を受け、園は入所者へアンケートを実施。「どんな施設を希望するか」という質問に約20パーセントが「やまゆり園のような施設」と回答した。重度の知的障害がある人も多く「回答なし」などの割合が一番多かったものの、剛志さんは「園に愛着がある入所者が多いことが裏付けられた。外部が思っているような、閉鎖的な施設ではないことを分かってほしい」と訴える。
 事件をめぐっては、津久井署捜査本部が13日、結束バンドで職員5人を施設内の手すりに縛り付け、うち2人にけがを負わせたとして、逮捕致傷や逮捕などの疑いで植松容疑者を追送検。これまでに入所者に関する殺人や殺人未遂容疑などで逮捕、送検しており、一連の捜査はおおむね終結した。植松容疑者は全ての容疑について「自分がやったことは間違いない」と関与を認めているという。
 横浜地検は17日、横浜地裁に植松容疑者の精神状態などを調べる鑑定留置の延長を請求し、認められたと発表。期間は2月20日までで、捜査関係者によると、鑑定を担当する医師が延長を申し出たという。地検は鑑定結果を踏まえて起訴の可否を一括で判断するとみられる。
 犠牲者19人は、単独犯としては戦後最悪レベル。仮に裁判になれば裁判員裁判の対象となり、公判前整理手続きにも「相当の時間を要するとみられる」(捜査関係者)。事件自体の全容はもちろん、今後の障害者施設のあり方など、時間の流れとともに新たな課題が見えてきている。