110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

皇帝たちの都ローマ(青柳正規著)

 この本は副題「都市に刻まれた権力者像」に表れているように、ローマの歴史を都市構築(建設)の立場から考察した本、中公新書版で初版は1992年、丁度「ローマ人の物語」の第一巻目が刊行された年に当たると思う。
 ここで、記述されているのは、ローマという都市がローマ帝国の中心でありえた時代まで、具体的には、コンスタンティヌス帝の時代までで(著者は)キリスト教に適した都市を、過去の歴史(ゴミ?)が残るローマでは築く事が出来ないと判断して、コンスタンティノポリスを作るとという時点を想定している。
 読み進めていくと、意外と、都市としてのローマとして注目できる期間が短いことに気づく。
 ローマが都市として、整備されてくるのは、カエサルアウグストゥスの間で、それまでは、垢抜けない「田舎の町」だったとされる。(ギリシャや、エジプトの影響がでるのがこの頃)
 その後、派手に建造物を立てると皇帝と、その影響で、財政が無くなり、慎ましく「緊縮財政」で過ごす皇帝が、代わる代わる出てくる。
 そして、ローマがローマ帝国の中心として、建設物として栄華を誇れるのは、トライアヌス帝~ハドリアヌス帝の紀元2世紀ごろまで。
 その後の五賢帝時代は、なんとか、秩序を保つが、大きな「投資原資」を生み出す「領土拡大」はもう期待できなくなってくる。
 そして、セウェルス朝(紀元3世紀)になると、皇帝も属州出身者が主になり、ローマという都市そのものの価値観が著しく低くなる。すなわち、都市の機能が重視されるのではなく、皇帝の威厳を示すだけの建造物が、無造作に作成された時期だとされる。
 その後は、ローマ帝国自体が没落し、都市に対する大きな投資はもはやできなくなる。
 そうすると、ローマという都市の「栄光の期間」は、紀元前1世紀後半~紀元4世紀初頭の400年くらいという事になる。
 ただし、共和制をある種の「善政期間」と考えると、少し違う見方が出来る(前出「ルビコン」参照)。
 いわゆる「GDP」最大がイコール幸福な時期なのかどうかという話か・・・?