110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

レパントの海戦(塩野七生著)

 「コンスタンティノーブルの陥落(1453年)」「ロードス島攻防記(1522年)」に続く3部作の最終巻。
 著者は、この時期の「キリスト教」と「イスラム教」の戦いの中から、特筆されるものを小説化しています。
 一連の作品を読んでいると、ある面では、現在のアメリカとイラクなどの対立とだぶってきます。
 また、本作品を読むと、時代の変遷により「力の落ちていく国家」や「新興国家」の関係も見えきます。
 すなわち、キリスト教を核に集結した「西欧連合艦隊」の中で、もっとも利害が深刻な「ヴェネツィア」(自国領のキプロス島をトルコ軍に侵略され、最後の砦「ファマゴスタ」に篭城中)と、利害関係の少ない大国「スペイン」がサボタージュをかけるなど「同盟国」内での歩調を合わせる事の困難さが浮き彫りにされます。
 しかし、この足並みそろわない、連合艦隊側の団結をもたらしたものは、皮肉にも「ファマゴスタ」陥落と、そこで、開城の条件を出しながらその約束を破り、残虐な対応をしたトルコ軍の行動だったわけです。
 すなわち、もう一度「宗教戦争」だという点を各国が確認(目的の一致)したことによると思います。
 当時の強大国「トルコ」相手に完勝したこの戦いは、常勝「トルコ」にも敗れる可能性があることを示唆しました。
 しかし、物量に勝るトルコに対して、常に「西欧連合艦隊」が勝利できるというわけでは無いと「ヴェネツィア」政府は考えたようです、その後、トルコと講和条約を結びました。
 この本の構成では、間にレパントの海戦をはさんで、前後に、コンスタンティノーブル駐在、ヴェネツィア大使バルバロの外交活動がでてきます。
 バルバロは帰任後元老院での報告で「軍事力だけでなく外交力も重要な要素」だという事を言っています。

 この著作を読んでいて、時代は変わりましたが「ヴェネツィア」と「日本」が少しダブって見えてしまいました。