110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

レヴィ=ストロース(エドマンド・リーチ著)

 レヴィ=ストロースに関する入門書、構造主義に関して、レヴィ=ストロースの名前は避けて通れないが、社会人類学者のリーチは、彼の業績を、ある面では批判し、ある面では取り入れている。
 すなわち、構造主義の目指した、一般的な関連付けには、限界があるという事になるのだろう。
 しかし、その分析の手腕や、論理的に不明瞭な部分、そして、実際の反証事例があるにしても、分析結果や論証が、(「奇妙」にと書いてあったりするが)「実事例に適している面がある」としている。
 本書を読み進めてきて、思い浮かんだのが(本書にも記述があるが)フロイトで、随分前に呼んだ「モーセ一神教」の中で、フロイトが、民族を一つの人間として見なして、その(マクロな)心理を分析する事ができる(民族の動きが判る)。
 という趣旨の内容に、分析方法は違うが、ある種の共通点があるように思った。
 そして、このレヴィ=ストロースについては、まだ、3冊目までしか読んでいない「カイエソバージュ(中沢新一著)」に、神話分析(神話論)という形で著されていた事に興味の発端がある。
 構造主義が、21世紀にも、ある意味思想的に残っているという事だろうか?
 当然、古い思想、ある意味評価が決まった思想(例えば「マルクシズム」)が「廃れる」という事はなく、その中の、部分が次世代へとリンクしていく事になる。
 そういう意味では、コンピュータ(技術)の発達した現在の方が、レヴィ=ストロースの手法を使って分析するという事の精度が上がる事は事実だろう。
 ただし、彼を「詩人」と本書で呼んでいたが、分析するためのカテゴリーの設定は、芸術的・天才的であったようで、その踏襲者はなかなか現れないようだ。