110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

逃走論(浅田彰著)

 この本は1984年に刊行されたもので、当時、浅田氏は若くして「構造と力」の著作で、思想界に華々しくデビューして、ブームを巻き起こした。
 (実は、浅田氏とは世代が近い。(当時)20歳台ででこの著作だから、・・・凄い人はいるものだ。)

 それから約20年が経過している。
 この本は、最近の私の傾向である、以前読んだ本の再読だが、1999年ごろ入手した本書を、当時の私が、本当に読めたのかは大きな疑問である。
 この本は、未だ私としては不明な「ポスト構造主義」のガイドブック、もしくは、礼賛の書の様に思われる。
 資本蓄積して巨大企業化のような(従来的)パラノ型ではなく、そのつど状況に合わせて、身軽に立ち回るスキゾ型が良いのだ、という考え方であり、最近の世の中も、一般的な、そう、「大衆」の傾向はまさにその様だ、トラウマのようだが、安倍政権の支持率の変化はこのような背景を考えれば、ある意味納得がいく、スキゾ的な大衆なのだ。(ちなみに、私「美しい国へ」を読んで、更に嫌いになった)
 
 ただ、本書では気になることがある、書評として「エネルギー・環境問題」について表している部分があるが、全体的に「楽観的」なのだ、ある意味「享楽的」でさえある。
 これは、ご本人の言葉では無いが、「おそらく人間の運命は、長く平穏無事な植物的な生存よりも、短いけれども火のように興奮した、途方もない生活を送ることなのだ。・・・」という引用文の心境なのかもしれない。
 
 さて、現在のステータスとして、浅田氏が著作を出しているのならば、機会があれば読んでみたいと思った。
 
 ちなみに、今村仁司氏との対談(ドゥルーズ=ガタリを読む)と柄谷行人氏、岩井克人氏との対談(マルクス・貨幣・言語)は、とても参考になった。