110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

現代思想の冒険(竹田青嗣著)

 この作品は1987年刊行されたものが文庫本されたものを読んだ。

 内容は、「ポスト構造主義」についての、そして、そこからさかのぼり、ニーチェヘーゲルなどの近代哲学に到るまでの、思想史?的なもので、非常に簡潔にわかりやすく著されている。
 (わかりやすく書けるということは、竹田氏が、それだけ良く各テキストを、読み込んでいるという証拠なのだろう)
 しかし、残念ながら、現代思想は、近代思想を批判する事であり、それを越えていないという趣旨で話が展開され、最後には、キルケゴール、そして、再度ニーチェハイデッガーなどの思想に、ことばを変えれば、より社会を対象にした思想から、各個人を対象にした思想に還っていく。
 ある意味「ニヒリズム」と捉えられようとも、近代思想までの、人間の発展に対する「楽観論」は20世紀で完全否定された、その脆い思想の足場の上で、どの様に考えてけば良いのだろうか? 
 その時、私としては陥りたくないのは、余りににも理性的・合理的に、今となっては回答の見出せない「思想・思索」を、軽んずる立場だ。
 考える時間を持つ事は、それをしない事との間に、大きな差が生まれる。
 ただ、私もこのような考えをしだしたのは、ここ数年であるから、それを、闇雲にお勧めするわけではない、ふとした時に、そのような事に興味があれば、取り組めば良いと思う。
 また、単に「そんなもの」でもある。

 本書を読むと、最後の方は、立場が違えど「生老病死」をはっきり意識していた、仏教の思想とも接近してくる。
 そんなことを思った。