110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

唯識とは何か(横山紘一著)

 東洋思想とか西洋思想とかいう区別は、無意味なことなのかもしれない。
 西洋思想は合理的で、近代の自然科学的発想の基礎であることは間違いないと思うが、それでは、東洋思想はそれに比べて劣っているのか?などと考えると一概には言えないように思う。

 例えば、本書で取り扱っている「唯識」という、仏教思想(哲学)についても、全ての事象は「意識」によってもたらされるという、西洋哲学の言葉で言うと「観念論」の立場で、論理が展開される。
 この「唯識」の全体像について語るほど、自分で理解していない上で話をすすめるが、八識についての考え方は、先日読んだ、茂木健一郎氏の脳生理学の考え方に近いものを感じた、すなわち、五識(眼耳鼻舌身)で、把握されたモノは、それぞれの感覚器官で捕らえたそのままのデータであり、「意識」というフィルターを通ることにより、情報、すなわち、何かの意図を付加された事象に変化する。
 私たちは、その「意識」により、良きにつけ悪しきにつけ、何らかの加工が施された情報を、例えば、目で見えていると思い込んで認識している。
 そういう事が唯識の考え方と茂木氏のクオリアの考え方が似ているなぁと思った。

 そして、唯識では、このような思想を、内観することにより、構成されたということが、驚くべきことであると思う。

 いわゆる、自然科学が客観性を持っている学問であるとは言え、例えば人間の「自然」から発生した要素ついて考えると、主観や直感、内観といった、ある意味、非科学的な要素に対時することが避けられないように思う。

 東洋思想は、かなり奥行きがあるものだと感じた。