110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

風土(和辻哲郎著)

 ちなみに、哲学的なものの本の紹介は、あるときにまとめてするようにしたいと思います。 
 私の読む本は古書が多く、たぶん、時代感覚とズレがありそうだからです。
 ただ、本書のように名著だと思われるものは適宜紹介していきたいと思います。

 さて、
 ある意味、現代という社会は、交通による移動時間や情報の流れる時間が、決定的に早くなっているために、独特な視点による研究が表面化しずらいのではないかと思う。
 本書は、風土的そして歴史的という2つの側面をもとに、すなわち、空間、時間の2つの観点から、そのうち、風土という軸に比重を置きながら、民族の精神的特徴を考察していこうとする試みだ。
 
 本書は、岩波文庫版(2000年、第39刷)で読んだ、既に読まれた人も多いことでしょう。

 現在の感覚で読むと、科学技術、経済状況が変遷し、日本についての特殊な事情と言えば「家」制度の崩壊ということなどから、随分と状況が代わってきているのではないかと考えることもできる。
 しかし、その根底にある、例えば道徳、慣習、宗教観などは、なにかを決定するときに、思わぬ状況から顔を出すことも考えられる。
 本書では触れられていなかったが、フロイトが民族をマクロ的に一つの人間として見て、その精神分析を行おうとしたように、民族固有の精神的傾向が奥に潜んでいるのかもしれない。
 
 明治時代から終戦までの期間というのは、とても特殊な期間であったのではないかと思う。
 そこには、西洋から大急ぎで採り入れた、近代合理主義と、それまで、培ってきた、東洋的・日本的な文化が混在して、一種独特の文化が出てきているようだ。
 それは、数々の批判もあると思うが、そのカオス的な内容に浸ってみるのも面白いことだと思った。