110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

世親(三枝 充悳著)

 本書は、講談社学術文庫版、底本は1983年の「人類の知的遺産」シリーズに収録されたものだ。
 主著者としての三枝氏とともに、唯識の解説の部分は「唯識とは何か?(春秋社刊)」の、横山紘一氏が著しているところがある。

 唯識思想については、何冊か読んだが、本書の解説が一番すっきりしていた。

 実は、私の身の回りには、本(モノ)が、たくさんある。
 しかし、そのモノたちの存在は、ある種の意識のつくり出したもの(極論でいうと幻)である。
 そのような考え方について書いてある。
 そういう考え方は(西洋哲学的には観念論?)の考え方には、ある種の違和感があることも事実だ、また、円成実自性などの本質論などを持ち出すと、現代的な論理性からは嫌悪する方もいるのではないだろうか?
 
 ところが、よく考えてみると、その様な合理的な考え方の裏には何かが隠されているような気がする。
 上手く言えないが、それは、合理性の裏にある非合理性ということ、たとえば、同じ線分の両極端で主張しているようなものなのかもしれない(どちらに振れても争点は一緒)。

 そんな中で、私自身が拠り所にする思想は、やはり東洋思想ではないかと思っている。
 (ただ、当然寄り道をすることも多いのだが)

 世親(バァスパンドゥ)、そして、唯識について知りたい方には取り付きやすい本だと思う。