110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

子供たちは泣いたか(シュヴァルベルク著)

 最近、余り明るい読書をしていないなぁと感じつつも・・・・

 本書は大月書店1991年刊行のもの、近くの図書館のリサイクル(廃棄)資料なのをもらってきた。
 古くなると読んでも余り効果の無いもの、たとえば、ビジネス書やコンピュータ関連書籍などと違って、本書のようなものはどのタイミングでも読める。

 本書では、第二次世界大戦終結直前に、ハイスマイヤーという医師の医療実験(生体実験)に利用された、20人の子供たちについての顛末と、その後の裁判の様子をドキュメンタリーにしたもの。
 以前、言語についての恣意性や虚偽性などを、あくまで抽象的な(概念として)書いたりしたが、本書での(軍事)裁判では、本当の意味で、真実とは本当にあるのかと考えさせられる、それは、言葉で解釈するより仕方が無いからかもしれないが、原告と被告の主張がすれ違ったまま、ただ時間が過ぎていくのは、本当の意味での「善悪」というイデアが無いことを表しているのかもしれない。
 そして、戦争のような大きな精神的なダメージを与える事象は、加害者側にもなんらかの影響を与えているように思う。
 精神病理を専門にしている方にとっては当たり前かもしれないが、自分というものについて考えてみると、自分が(単に)生存するためには、何らかの形で自分を肯定しないと生き続けることは難しい。
 (自分を否定し続けると、自分が分裂する?)
 人間は、そのために「忘却」という装置を用意しているのかもしれない。
 そのシステムは、時によると、人為的に作用するものではないかといぶかっている。
 それが、自我なのだろうか?
 
 最近読んだ「昭和天皇」による、天皇の戦争責任や、かなり間接的な関連だが、最近少し話題になった映画「靖国」などというものの、背景にちらちら見える、なにか影のようなものが気になるのだ。
 例えば、現行の福田内閣の支持率が低下しても、なかなか変われない背景には、何かがありそうなのだが。