110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

啓蒙の弁証法(ホルクマイヤー・アドルノ共著)

 本書の原書は1947年刊行された、私は、2006年刊行の岩波文庫版を読む。
 当時、ファシズムなどの時代の状況を踏まえて、『啓蒙』という考え方を批判的に考察していく本書は、時代が変わっても読みつづけられる著作だと思う。
 そして、その『啓蒙』思想は現在も変わらずに残っており、もし、機会さえあれば、また新しい事件を引き起こすことになるのでは無いかと思う。
 極端な合理主義は、その反作用(非合理)を包含してしまう。
 そして、本書も、『啓蒙』を批判しながら、それを、理性(ロゴス)で著すという、矛盾が存在する上で展開される。
 ここには、ある意味、凄い緊張感が存在するように思えてしまう。

 さて、そんな鋭利な著述を読んだ後で、ふと、21世紀にある(在る)私はどこに向かって行けば良いのだろうか?、愚昧なニヒリズムを感じてしまった。
 
 ちなみに、本書を読んでいて、こんな表現をみて笑った。
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 ことさらに「美しい心」(das goldene Herz)などを強調するのは、社会が自ら創り出した苦しみを自認する場合のやり口なのだ。・・・
 (4.文化産業、より)
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 何を笑っていたかというと、遅ればせながら、「美しい心」を「美しい国へ」と読みかえていたのだ。
 今となっては、懐かしい話なのだろう。