110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

探求2(柄谷行人著)

 本書を講談社学術文庫版で読む。

 探求1からの自-他問題をさらに視点を変えたり、論旨を延長したりして、その思索を深めている。
 ここでは「特殊(個)と一般(類)」という一般に考えられる分類に対して「単独と普遍」という、別の切り口で、論旨が進む。
 本書の第2章では、デカルトの「コギト」についてまず考察し、そこから、デカルトの思想を継承していると者して、スピノザに焦点が移る。
 ここでは「神」という考え方について、それが、(絶体的)他者であるとされ、その他者に対置する者として、自分が存在するという、論旨が生まれる。
 すなわち、自分(自我)を起点にして、他者を見つけることは、大きな論理の飛躍が必要であり、自分と他者の間にある「壁」を魔法のように超えていかなければならない。
 しかしながら、他者が在ることから、その反転として、自分があるのならば、このような自他問題の「壁」は無い。
 そこには、自分というものが、(様々な解釈ができると思うが)他者によって「在る」ことになる。
 それは、今まで、自分が中心にあるという考え方の倒立になる。
 (それなら「自分」とはなんなんだろう?・・・と新しいお題目が発生する)

 さて、話は横道にそれるが、最近デカルトのこの「コギト」問題にからむ著作が手元に溜まってきた。
 最初は、現在に近い思想を読んで行こうと思ったのだが、どうも、哲学・思想系はそうもいかないらしい、この問題が、それだけ重要なことなのだろう。
 やはり、基礎は大事なのだなぁ・・・と痛感する。

 「探求」シリーズは、そういう基礎的な問題の重要性、面白さを教えてくれる良い本だと思う。