110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

論理の構造(中村元著)

 本書は青土社より2000年に刊行された。

 実は、本書は、幾分見栄で、以前に買ったものを、読まない(読めない?)ままになっていたが、今回、やっと(とりあえず)読み終えることができた。
 上下巻で1000ページを超える大著で、そのうち、上巻は2回ぐらい読み直すことになったが、本書は、(あまりにも雑な分類だが)東洋思想と西洋思想の比較をする上で、非常に重要な位置にあるものと思う。
 ここでは、東洋思想、インドを起源に、中国、チベット、日本、そして、ギリシャを期限にする、いわゆる哲学の論理について、考察をしている。
 本書を読むと、言語の違いにより、論理の構造が異なることがよくわかる。
 そして、深遠な論理性を持っていたインド思想が、西洋のような、物質的な文明を作らなかったのかが、見えてくるような気がする。
 それは、言葉が先立つものではなく、思想が言葉に影響を与えたというような、弁証法的な関係かもしれないが、現在から過去の事象を見る限りでは、その言葉のうちに、思想が見え隠れするのだ。
 そして、東洋思想というと(私は)論理性が希薄なイメージがあったが、論理性が希薄なのは、我が日本語によるところのものだったのだ、却って、インドの思想、論理性には西洋の哲学にも負けない深みがある。

 そんなことを気づかせてくれる本であり、この研究の更なる深化を期待したいのだが、残念ながら、中村氏は(21世紀を前に)すでに他界している。
 そういう面で、本書は、すばらしい本であり、ある意味、とても残念な本でもあるのだ。