110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

二十世紀思想渉猟(生松敬三著)

 本書は1981年青土社刊行のもの、現在は、岩波現代文庫版で読めるようだ。

 「二十世紀思想渉猟」という題名とは言え、1920年代、ドイツのワイマール文化を中心に、今では埋もれてしまった様な様々な思想家(文学者・芸術家)についてコラムが描かれる。
 ドイツの1920年代は、タイミング的には、日本の終戦直後と似たような状況だと思う、しかし、そこからの回復・展開というものはそれぞれ固有のものがあり、歴史というものの奥の深さを感じさせる。
 本書を読むと、思想については、様々な側面から考察しないといけない事がわかる、すなわち、思想家と言われている人が、その時代の思想を必ずしもリードしているとは限らない、それは、小説家や詩人であったり、芸術家、自然科学者、マスコミ、政治家、宗教家、等々・・・であったりと、一律に決めることはできない。
 歴史の考察が、過去を振り返る事にあるならば、その中で現在にも通じる、一番影響力のある思想・人物が残るのだが(進化論みたいな考え方)、その当時のことを考えてみると、それぞれの人間が相互に影響しあっている状況がある。
 すなわち、その時代にポピュラーだった考え方と、現在に残った考え方には、差異があるかもしれないということ。
 厳密に言えば、時代は繰り返さないが、抽象化することで、過去に似たような物語が存在したことを捕まえられるかもしれない。
 

 そんなことを考えさせてくれる著作であった。