110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

夜這いの民俗学・夜這いの性愛論(赤松啓介著)

 本書は1994年明石書店刊行の「夜這いの民俗学」「夜這いの性愛論」を合本にしたもの、ちくま学芸文庫版で2004年刊行。
 読んでみると分かるが、大変面白い。
 しかし、現実にあった事実なのに、夢(物語、フィクション)を見ているような感覚に陥ることもある。
 そして、学問に対する思い込みを粉砕してくれる本でもある。

 本書で著者の体験を交えて語られる「夜這い」という仕組み(システム)についての評価は分かれるところだろう。
 現在から見ると、古い体質である共同体(ムラ・マチ)での、本システムはある意味非常に繊細な運用がなされている、人間の性情を読み込んだシステムだといえるのではないだろうか。
 
 しかし、このシステムは現在は存在しえないだろう、それは、個人主義が常識化した現代にそぐわないからだと思う、それは、各人の所得の向上、生活水準の向上によるところが大きいと思う。

 このシステムは「他者」の存在を認識するには良いのではないかと思ってしまう。
 現在は、その「他者」がなくなってきており、「(他)物」と化しているのではなかろうかと思うのだ。
 
 人間の生活・慣習というものが、常に変化していることを感じた。