110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

異形の王権

 本書は1986年平凡社から刊行された、現在は平凡社ライブラリーで読むことができる。
 
 異形というと、他の人と一見して異なる風貌ということだ。
 すなわち「非人」はそれが一目で判別できる格好(特長)をしていたわけだ。

 最近、差別部落などの文献を読むことが何度かあったが、そのような差別民と呼ぶことのできる人々は、かつては、ある意味特権的階級であった(非人という言葉は、否定的な意味を現在は持っているようだが、かつては、「人に非ざる」すなわち、どちらかというと神に近い存在とみなされていた時期があるのだ)。
 それが、時代の流れとともに、賤民として扱われるには、何か大きな事件があったはずだ。

 その時代の区切りとしての、ひとつの考証が本書の表題にある「異形の王権」、後醍醐天皇の時代を指し示すのだ。
 天皇としてのその政治力が衰退する中で、新しく勢力を取り戻す事、それは、物理的にも、異形の者たちの力を借りることであり、天皇自ら、異形の者となることである。
 
 しかし、その時代も長くは続かずに現在に至るわけだが、その執念のようなものは、切れ切れに時代の中に影響を及ぼしているらしい。

 この「異形」という言葉は、特に認知された用語ではないのだが、私的にはとても利用価値のある言葉の様な気がする(武田泰淳の小説での使い方など参考になる)

 現在は、ある意味、自由な世情なので、異形の者も多くなってきているようだ。
 しかし、深読みすると、これも何かの兆候なのだろうかと思えてしまう?