110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

不可触民とカースト制度の歴史(小谷汪之著)

 本書は明石書店1996年刊行のもの、また「リサイクル資料」である。

 多分、図書館においてあれば読まないだろう本も、リサイクルとなると手が出てしまうのは、自分の変な欲なのだろうと思う、しかしながら、そういう時は、自分が普段興味を持っていないジャンルや著者の書籍にも、気楽に手が出るというのが利点だろう。

 本書は、インドのカースト制度についての通事的(歴史的)な変遷を描いたもので、まぁ、普通に生活する以上、関係の無いジャンルだ。
 しかし、例えば「不可触民」という観点で見れば、日本にも同様の差別は、厳然と存在した時期もあれば、現在も形を変えて存在するであろうことを考えれば、他国の事例を、他者の目(客観的)に見つめるということは、あっても良いように思う(プラトンだって、奴隷が公然といる社会を考えていたわけだしね)。

 本書で、とても参考になったのは、18世紀~20世紀に掛けては、判例をもとに事例を紹介しているこで、現代的な、基本的人権の尊重とカースト(人種の階級)の対立の図式なのだが、事例によっては、かならずしも、カースト制が悪いと言えない場合も出てくる。

 これは、現在の法律でもあり得ることだろうが、例えば、ある犯罪が非常に残虐であろうと、法で決められた罪科しか与えられない。
 と、するとき、あくまで私法の範疇だが、カースト内の法(掟?)で裁いたほうが(人として)正しく裁けるのではないかと思う事例(事態)もあるのではないだろうか?
 (敵討ちなどは、怨恨が怨恨を生むということで、基本的に認められないものとはいえ、その事件の内容によっては、適用しても良いのではないかと思う事がある)

 この世の中が、ひとつの法、価値観では動かないという事なのだろうと思ってしまう。
 なかなか、興味ある本であった。