110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

蝮のすえ・「愛」のかたち(武田泰淳著)

 本書は講談社文芸文庫版。

 本書には、表題作のほか「才子佳人」の3編が収められている。
 何故、題名『「愛」のかたち』の「愛」には「」が付いているのだろう?
 本作の3編は、様々なかたちの愛が綴られている。
 その愛は、ある意味理想化された愛であるのだ、そのため愛には括弧がつけられて「愛」となっているように思うのだ。
 そしてその抽象化・理想化された「愛」は、実存・現実の愛とは異なるものだ、そこに、滑稽な現象・事件をひきおこす(隙間がある)。
 
 現実は意外に起伏の無い日常のつみかさねかもしれないのだが、その反面、妙に抽象的な言葉に、本書のような「愛」に幻惑されているのではないか?
 人間の営みも、ある意味、夢を見続けているのだけなのかもしれないのだが。