110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

雄羊(ジャック・デリダ著)

 本書は2006年ちくま学術文庫版。
 
 2003年にハイデルベルク大学で行われた、ハンス=ゲオルク・ガダマー記念講演を収録したもの。

 パウル・ツェランの詩を、解釈しながら、既に故人となっている、ガダマーとの対話を続ける著者の思索が著されている。

 デリダの著作は、私にとっては「ただ難解」なだけだという先入観があったのだが、本作は、その薄さもあるのだろうが、とても感銘深く読むことができた。

 それは、著者と他者との対話、それは一方的にどちらかの死によって断ち切られる必然があるものだが、それでも、著者はその対話をし続けること、その熱意に何か感慨を受けてしまったのだ。

 本書は、上記ツエランの『息の転回』という詩集の中の一行「世界は消えうせている、私はおまえを担わなければならない。」を、問題の起源として、最後にはある種の存在論についての考察へ(問題提起)へ帰着する(興味ある方は、一度お読みください。訳者の林好雄氏の詳しい解説もあるので、理解しやすいと思います)。
 
 詩を読むこと、そして、それがある種の哲学的意味を持つこと、そして、その言葉に、常人では考えられないような深さで対峙するする人たちがいる(いた?)ことについて、大分、考えさせられることになった。