本書は
岩波文庫版、表題作以外に「
肖像画」「ネフスキイ大通り」の2編を含む。
狂人を、題材にするのはなかなか難しいところがあるだろう、確かに目を引くのだが、そこで話が停止してしまう危険性がある。
本書の作品は、大なり小なりその狂気を扱っているのだが、私としては「
肖像画」に登場する画家(チャルトコーフ)に一番惹かれるところがある。
それは、或る意味、芸術が日常性を超えたところを目指してしまったところ、その極点に、人間を超える者=狂気が見えるからなのではないだろうか?
しかし、その領域まで行き着く(その)人の苦悩は計り知れないと(ただ)言ってしまう自らの凡庸さに、・・・笑うべきか、泣くべきか?