110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ことばについて考える(川本茂雄著)

 本書は、当初日本能率協会刊行の月刊誌「IE」に掲載された対談・鼎談のうちから選択したものを、講談社学術文庫版として出版したもの(1979年)

 本書は、とても良い本だ、対談の相手も良い人選で、全く隙が無い。
 そして、「ことばについて考える」というタイトルからは、日本語論や記号論を創造しがちだが、本書では、「読むこと、読み取ること」「工学と言語・・・図形をめぐって」「翻訳について」「言語と認識」「コマーシャルの言葉」と言うように、少し、異なった視点から「ことば」というものを考えていく。

 ここでは、本書の趣旨と全く関係ないところを引用してみよう、ここで、川本氏が1979年頃の「若者」についての言葉、
 『ただ、心配なのは、人に対する思いやりというのが、うまく形に出てこない。例えば電車などに乗っていますと、若い人なんか大きな恰好して、ほかに人が坐れるのになかなか譲ってくれない。冷たい人間なのかと思って、「ちょっとすみません」と言うと、向うは、快く譲ってくれる。ですから決して人を坐らせまいとしているんでもないんですけれど、何となしに人へのいたわりというのが表に出てこない。話してみると若い人ってとてもいいんですよ、純真で、親切で、われわれの世代よりかずっといい。(笑)だけど形にでてこない、形をなくしたというのは進歩だと思うのです。ただ新しい形ができない、それが不幸じゃないかという気がします。』

 これは、現在の若者ではなく、今から30年前の人向けなのですよね、すなわち、私の世代です。
 何で、こんなに長く引用したかというと、最後の「新しい形が出来ないのは不幸・・・」というフレーズです。
 これは、恐れ入りました・・・何か、今もって出来ていませんね。
 これでは、「最近の若者は・・・・」などと説教できません。
 反省させられます。