110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

昭和恋々(山本夏彦・久世光彦著)

 本書は1998年清流出版刊行のもの、現在は文春文庫版で読める。

 昭和の写真(風景)とその題目に関するコラムを、2人の作者が書き連ねるという作品。
 奇しくも、両者の文体の競演という形になっているようだ。

 そして、その文体、文章だけならば、私は山本夏彦翁に軍配を上げる。
 これは、それを読む人の好みだから仕方ないと思うが、改めて、山本氏の魔物のような文章に思いを馳せることとなった。
 それは、山本氏が芝居の世代であり、久世氏がテレビの世代だからなのではないだろうか。
 そして、山本氏の方が、表現方法が不自由な立場にいるために、却って、その文章が妖しくなるのではないだろうかと思った?

 それにしても、私たちは、かつての風景とともに、その言葉を失ったことを、重ね重ね感じるのだ。