110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

にせユダヤ人と日本人(浅見定雄著)

 本書は、朝日文庫版で読む(文庫版は1986年初版)。
 イザヤ・ペンダサン著「日本人とユダヤ人」の内容についての、聖書の原典からの批判を行っている。
 また、翻訳者でもある、山本七平氏の誤訳についても指摘している。

 実は、「日本人とユダヤ人」は、以前ここでとりあげている(以下に再掲する)。
本書は、山本七平氏が著したものというのが定説と聞いている、角川ソフィア文庫版を読む、ここでの初版の年は1971年だから、もっと前に刊行されたのだろうと思う。

 さて、本当の意味のベストセラーなので、読まれた方も多く、いまさらコメントをすることも無いのだが、一つだけ言えるのは、現在の視点で読んでも、まったく内容が風化していないことが驚異的な事だと思う。
 もし違和感を感じる人がいれば、それは、その人が、少なくとも当時と違う「日本人」であるということだと思う。
 それは、良いことなのか、悪いことなのかは、当然ながら不明であり、二項対立にして議論の結論を望むのであれば、それは、ある意味新しい世代の人なのだと思う。

 絶賛である。
 そして、山本七平氏の著作は、私自身好んで読んでいる。
 本書を読んだのは、本書の著者の穴を探そうという、目論見もあったのだが・・・・
 
 結論として、山本氏(ペンダサン氏)の敗北である。
 原典の誤訳については、言いわけのしようが無いように思う。
 残念ながらどうしようもないことだろう。

 ただし、その上で、山本氏の著作は、読むと思う、それは、氏の実体験の語られているところに、興味を惹かれるからだ(戦車を埋める話とか)。
 山本氏も、聖書の事例などひかずに、自分の体験から出た思想を語れば良いと思うのだが、残念なことに、それだけでは、面白くも、可笑しくもない著作になるのだろう。

 さて、論争の行われた1980年代から、30年が経過した。
 「日本人とユダヤ人」が、誤訳や間違った引用の書であることを認めたうえで、全体的な思想(哲学)はどうだろうか?
 そんなことを考えてしまうのだ・・・・。