110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

戦闘美少女の精神分析(斎藤環著)

 本書は2000年大田出版から刊行のもの、私はちくま文庫版で読む。

 本書は、今となっては余り聞かなくなった「おたく」について、そのひとつの象徴である(アニメーション上の)美少女、それも、戦闘する美少女をひとつの投影物として、(おたくの)精神分析するという趣旨のもの。
 読んでみると「意外と難しいのではないか」という内容なのだが、本文庫版でも第3版になっている。
 (本書中には、フロイトラカンベイトソン・・・等々出てくるのだが?)
 それだけ売れているなら、日本も知的レベルは高いのだなと・・・大分、安心した。
 
 しかしながら、本書の内容をそのまま鵜呑みにすると、どうも、この「おたく」文化は、海外から見ると特異かもしれないが、それはある意味独特な要素として認めればよいのではないか、という「自己肯定」の雰囲気になってしまう。
 問題は、その点が強調されるとどうなるか?・・・ということだ。
 私的には、そこが気になるのだ、すなわち、昨今の「日本ガラパゴス論」を考えてみた場合についてだ。
 
 さて、実は、本書にも歴史的なことが書いてあるが、ふと読んでいて、なんとなく歌舞伎について考えてしまった、根本的な精神性は異なるのだろうが、例えば女形や、衣装の早変わりなど、技術的な差はあるにしろ、何か、すごく抽象的な部分が、この「おたく文化」に似ていないだろうか?
 
 そして、フロイトも良いのだが、本書には、ニーチェについても触れても良いような気がするのだが、ポストモダン(状態)では不要なのだろうか?

 そんなことどもを考えてしまったのだ。