110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

恋に似たもの(山本夏彦著)

 本書は1986年文春文庫版、そして私は1996年初版の中公文庫版で読む。

 山本氏の著作は極力ここに上げないことにしている、著作数が多いこともそうだが、秘密にしたいところもある。
 しかし、これは、どうだろう?
 人の一生
 おいおい泣いているうちに三つの坂を越す。生意気なことを言っているうちに少年時代はすぎてしまう。その頃になってあわてだすのが人間の常である。あわててはたらいている者を笑う者も、自分たちがした事はとうに忘れている。かれこれしているうちに二十台すぎてしまう。少し金でも出来るとしゃれてみたくなる。その間にノラクラ遊んでくらす者もある。そんな事をしているうちに子供が出来る。子供が出来ると、少しは真面目にはたらくようになる。こうして三十を過ぎ四十五十も過ぎてしまう。又、その子供が同じ事をする。こうして人の一生は終わってしまうのである。

 著者が10歳のときの作文である。
 もちろん異論を持ったり、細かい部分の齟齬を指摘をされる方もあろう。
 でも、なんとなく当たっていないだろうか?

 さてさて、本書では、著者の家族や親戚のことを書いている部分がある。
 あの鋭い視点は、どこから、いや、どのような(家族)環境から生まれたものだろうか?
 そのような事を怪しんでいるのだ。

 私は、この著者と、ソクラテスが重なって見えるのだ。