110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

身体・表現のはじまり(亀井秀雄著)

 本書は、当初講談社から1974年に刊行されたもの、その後改訂されて、れんが書房新社から刊行された(1982年初版)。
 
 内容は、身体論である。
 本書には、メルロ=ポンティ市川浩というような身体論の著者の名前も出てくる。
 そして、それと対を成すように、意識を形成するもの、仲立ちするものとしての、言語というもののへの考察も出てくる、ここでは、例えば、ソシュール時枝誠記等が表に出るのではなく、三浦つとむ吉本隆明の考察に主眼が置かれていることに興味を持った。

 そして、本書の話の骨格に『アヴァロンの野生児』ヴィクトールという青年の、その感覚・感性の発達の過程を下敷きにしているところに、興味を持った。

 人間は、やはり周りの環境に従って、人間になるのだという事なのだろう。
 それは、あたりまえなことと言われる方もいると思う。

 そして、ある文明の発展衰退も、その作られた社会の(それ自体、再帰的な)相互作用によって、影響・変化を受けるものなのだろう。
 それは、かのローマ帝国にしても逃れられないことだった。

 身体論は、時流としては、既に昔のものかもしれないのだが、私にとっては今更興味があるのだ。