110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

戦争論(西谷修著)

 本書は当初1992年岩波書店刊行のもの、その後増補されて、講談社学術文庫版(1998年初版)として刊行された。

 戦争論、あるいは、戦争に関する論文・著作はたくさんあるが、本書の特筆は(人間の)存在論敵な見地からの論述にある。

 戦争は何故起こるのか、それは人間の理性では捉えられないモノの氾濫、噴出によるものだとする。
 しかし、それにも関わらず、人間は、理性を過信し、戦争を押さえ込もうとする。
 それは、何か、地震と同じようなメカニズムだ。
 
 そして、最近では(人間の奢りも顕著になり)戦争がひとつのエンターティメントと化してしまった。
 特に門外漢の私などの目には、戦争というものが持つ本質的な悲惨さ・醜さが、見事に隠蔽されてしまったかのように思える。
 その考え方を反転してみると、もし(私が)戦争の当事者になった場合には、あたかも(戦争)ゲームの一個のキャラクターと看做されることを著しているのではないのか。

 確かに、世界人口はどんどん増えているようだから、どんどん、人間の相対的な価値は下がる一歩なのだろう。
 もしかすると、わが国の「少子高齢化」というのは、日本人の(少し拡大した意味だが)実存を取り戻すための、(逆説的に)良い動きなのかもしれない。

 この、へんな理屈に対抗するには、本書の中の「世界」という考え方が適している様に思う。