110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

わざとらしさのレトリック(佐藤信夫著)

 本書は1986年「言述のすがた」という題名で青土社より出版されたものを、表題の様に改題し、講談社学術文庫版で刊行したもの。

 この著者の作品は間違いないあれば読んでいる、本作では、漱石小林秀雄吉行淳之介谷川俊太郎井上ひさし筒井康隆ロラン・バルトという散文について、その言述を評価するもの。
 言葉は思いもよらないところで、その著者の意図したところの意味を外れてしまう(厄介な)ものだ。
 だから、言葉による表現には多様性・・・即ち、意味を伝えるための多くの手法がある。
 そこで、本作では、ある意味異端とも言える作者(井上、筒井・・・失礼)が登場する。
 しかし、本来、その意味するところの不定性があるのが、言葉の本来の姿ならば、表現自体の論理性よりも、いかに、<何か・・・内容>を、伝えるのか(その行為)が、問題になるのではないだろうか。
 例えば、明らかに、自分の意図と反対の事を伝え続けても、結果的に、自分の意図に適った「結果」が発生すればよいわけだ。
 本書では、言述、そして、言葉というものを考える良い機会を与えてくれる、良い著作だと思う。
 
 ちなみに、Webで調べると、本書は古書としては、意外にレア(私にとって高値)なものでした。