110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

共同研究 パル判決書(東京裁判研究会編)

 本書は講談社学術文庫版で読む。

 本書は、今まで読んできた中で一番良い本だと思う、残念なのは、ただの一読では本当の深みは味わえないし、さりとて、本書の圧巻の容量を再読、再々読する力があるかという弱音もある。
 終戦記念日の日に、ふと、積んであった本書を取り上げて読み始めた。
 最初は、単なる語呂合わせのようなもの、すなわち、気軽に読めれば良いと思った。
 しかし、読み進めていくと、ところどころ意味があやふやになりながらも「パル判決書」で述べたいこと、伝えたいことが浮かび上がってくるのだ。

 日本という国は、「自虐史観」と自称し、あたかも第二次世界大戦を「15年戦争」という形でブラックボックス(タブー)化し、それが定着してしまった観があるのだが、靖国神社問題、A級戦争犯罪人といわれた人々(被告)が、(一見公正に)裁かれた東京裁判、そして、その中で、異端とも思える「被告の全員無罪」を宣告した、パルという人、その人の長大な判決文を読むことは、その「自虐史観」の空白を少しかもしれないけれども、埋めることになるのではないか・・・・と思うのだ。
 だからといって、無罪と決定されたが、戦争という行為を許しているわけではない、それに関する、責任のとり方は、日本という国としての責任として留保しているのだ。
 無罪だが、罪はある・・・それは、どういうことなのかは、大変ご苦労様だが、本書を読んで欲しい。
 
 私は、取り立てて右翼的な思想は持ち合わせていないと思うのだが、本書を読んで、昭和初期の日本人のレベルの高さを思い知った。
 残念ながら、現在の日本人は、彼らを抹殺してしまったのかもしれない(民主党は明白にそうしたのだが)。
 しかし、戦後の奇跡的と言われる復興を果たした原動力は、彼らの力が大きかったのではないかと、私は怪しんでいるのだ。