110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ピカソ「ピカソ講義」(岡本太郎・宗左近著)

 本書は1980年朝日出版社刊行のもの、私はちくま学芸文庫版で読む。

 本書は岡本太郎氏がピカソに関する講義をするという趣旨で、その相手役が宗氏のようだ。
 ただし、本書を読むとわかるが、ピカソを話の種にして岡本太郎氏の芸術観を開帳しているという感じがある。
 あとがきや解説者は、その点を指摘して批判している様に思うのだが、一般的にはそれが正しいのかもしれないが、視点を変えるとすでもないかもしれないと思うのだ。

 それはどういうことかというと、本書でただ一人ピカソの目線にあるのが(異論はあろうが)芸術家=岡本氏だけなのだ、その他の人は、学者として、評論家として、そこに同席している人なのだ。
 だから、岡本氏が、ピカソを見るだけで直感的にわかるとか、青の時代が日本人には受けるようだが、それ以降のほうが優れているとか、俺はピカソを超えているだとか言う(大胆な)発言を、そのまま理解できないのは当然かもしれない。
 それは、同じ芸術家の目線と、それを鑑賞したり評価したりする(ユーザーの)目線の差のように思う。
 ひがみも含めて言えば、大ヒット曲を作り著作権料で大金持ちという人が、大音楽家なのかどうかということではなかろうか。
 だから、岡本太郎ピカソは、同じ世界の中にいて発言をしているのだが、その他の人々は、ひたすら外面的なことを元に評価せざるを得ないことになる。
 だから、本書では、岡本氏と宗氏の意見が食い違った印象になるのだろう・・・と思ったのだ。

 そして、私としては、岡本氏がとても誠実な人であったことがわかったのだ(あとの祭りだが)。

 そして、こういう考え方に陥ったのは、丁度並行して「歎異抄」(増谷文雄著:ちくま学芸文庫)を読んでいて、法然親鸞の関係について感じたところによるものと思うのだ。