110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

土(長塚節著)

 本書は岩波文庫版で読む。

 なかなかの長編であり読むのに時間が掛かったもの。

 さて、本書をどう評価すればよいだろうか、以前の日本にはこのような状況があったのだという、一つの歴史としてみるべきか、はたまた、現在では失ってしまった何かあるものがここにあるのではないかというべきかと、様々な事を考えてしまうのだ、しかし、この作品、この著者のことを知ってしまうと、冷房の入って部屋で読んでいる自分の状況からは、すべて、別の世界から高見の見学をしている様なものではないのか、と思うのだ。
 例えば、本書を高く評価するについて、どこかで、自分に嘘をつかなくては、そう断言できない部分、偽善的な部分が、自分として見え隠れしてしまうのだ。
 本書の書かれた時代からは、相当な年月がたっているのだが、未だ世界には数億という飢餓がある。
 そういうことを知りながらも、満腹することを疑問としない、そういう矛盾を抱えながら、人間は生きていることになる。

 そういう意味では、本書で描かれた、人間の矛盾性というものは、抽象的な意味で、人間が背負っていかざるを得ないものだと言えるのではないだろうか?