110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

物理学とは何だろうか(朝永振一郎著)

 本書は岩波新書版で読む。

 まさに表題についての著作だ、そして、著者の絶筆となったのが惜しいところだ。

 しかし、未完とはいえその内容は他のいわゆる物理の導入書とは一味違う。
 ケプラーガリレオニュートンなどの巨匠は、それまでの怪しげな占星術錬金術と決別し、科学という礎を築いたのである、特に、ニュートンは、数学という言葉を駆使して、普遍的な法則を導き出した。
 これは、画期的なことであり、個々の要素(原子とか)それぞれについて、起点や運動量、運動方向がわかれば、将来(また過去も)その法則性から予測ができるとされる境地に達したかに見える。
 しかし、現実的に考えると、ただでさえ多くの分子や原子の塊の、個々の要素の属性など把握できるのであろうか、いや、時間を掛ければ測定できるのかもしれないが、あなたの有限な時間で測れるものだろうか?
 だから、物理学というものが直面した問題、個別の要素の法則性がもし厳密にわかったとして、その膨大な数量を抱える、集合体に敷衍するためにはどうすれば良いのか?という事。
 そこには、ある種の確率計算が繰り込まれてくるという、その考え方の飛躍について、本書は、高等数学を利用せずに説明しようとする試みであった。

 さて、科学技術について考えると、20世紀はそれまでの世紀と少し異なる要素があると思う。
 それは、まだ、19世紀までの技術であれば、人類が成長を止めれば自然の回復力で地球は保つことができたと思うのだが、20世紀以降は、人為的に回復させない限り、回復させることが難しいモノがあるように思うのだ、それは、濃縮した放射性物質だとか化学製品のようなものを想定しているのだが・・・・