110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

仏陀のおしえ(友松圓諦著)

 本書は、昭和八年第一書房から「現代人の仏教概論」として刊行されたものが、表記のように改題され講談社学術文庫版として刊行されたもの。

 だから、本書の中に「戦後」という言葉が出てきて、「おや」と違和感を感じた。
 それは、第一次世界大戦後を表し、世界に台頭していく気概が窺える、その時に、廃仏毀釈で受けた衰退を取り戻すべく、仏教を高揚していこうという意図を窺うことができる。
 そして、その後の歴史を知っている私は、意地悪な意識を持ちながら本書を読み始めた。

 しかしながら、その意識は払拭された、本書は「最高の仏教入門書」と帯にあるそのままに、今まで読んだ仏教関連の書籍の中では、最善の入門書であると思う。
 何故か、本書は「批判的な視点」を最後まで崩さずに著されている。
 例えば、仏法僧という3つの重要な要素が仏教には在るが、仏(釈迦)が先にあるのか、法(思想)が先に在るのか、各宗派によって異なり、それれによって、その教義は異なってしまうことや、釈迦はキリストと異なり、人間として80年の生涯を終えるのだが、生存中に関して、釈迦は自身の思想・言葉を元に教えを広めたのだが、死後、残されたものが、釈迦を神の位置に引き上げてしまったという物神化を指摘するなど、必ずしも仏教(そのまま)礼賛でないところ、その冷徹さが、共感を呼ぶのだ。
 だから、少し視点を変えれば、仏教ならぬ、様々なイデオロギーに内在する矛盾点を見つめる視点を、本書を通して養うことができるのではないかと(ちと、持ち上げすぎか)思うのだ。

 そして、本書もうれしいことに、100円で入手した、たかだか105円の私の脳みそには適当な刺激である。