110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

人間曼荼羅(辻村ジュサブロー著)

 本書は昭和53年求龍堂刊行のもの、私は中公文庫版(1991年発行)で読む。

 少し前に、ジンメルの「芸術哲学」を読んだのだが、大変難しかった。
 ところが、本書も芸術哲学について書いてある様に思うのだが、何気なく気持ちに迫ってくるところがあるのだ。
 人形を人間に似せて作るとか、人形は人間の鏡であるという言葉に出会うと、芸術が表したいと望む「何か」があることに気づくのだ。
 しかし、気づいたからといって、それを手に入れられる訳ではなく、その「何か」に極限まで迫って行くという営みが在るだけなのだろう。
 
 若いときは有り余る情熱でそんなことは考える暇もないのだろうが、情熱が切れる年頃になると、その空隙に得体の知れないもの「何か」が入り込んでくる。
 入り込んできたものは、当然一部でしかないので、全体をつかもうとするが、何故だろう、それをつかむことはできないのだ。
 しかしながら、その捕まえられない「何か」を求めて、一生を終えることができれば、とてつもなく幸せなのではないかと・・・・まぁ、くだらない達観ではある。