110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

地獄少女にはまる

 本当に季節外れな話題なのだが「地獄少女」というアニメにはまった。
 元は、パチンコをやっていて、原作には興味がなかったのだが、もしかすると、パチンコでの下世話な欲望とは別に作品に興味があるのではないかと思って見てみた。
 確かに、30分のアニメでは表現できない「重い」テーマを取り扱っているので、ただ単に軽薄なだけの回もあるが、1シリーズ中最後に持ってくる連作については、なかなか興味深く考えさせられることが多い。

 「地獄送り」という伝承をもとに現代風にアレンジした作品で、必殺仕事人などと似た様な勧善懲悪モノと捉えている人もいるようだが、もう少し奥が深い、1シリーズ目では、余り極端に重い作品は少なかったが、数十年前に地獄送りした依頼者が、現在も存在しその(依頼者の)最期・・・地獄への旅立ちに立ち会うという設定の「煉獄少女」や、全く理不尽に地獄へ送られる「病棟の光」など興味があるのだが、このシリーズでは、対象視聴者が若年層だということからか、中年、老年を中心とする作品が少なかったことに不満があった、それは、地獄通信でのルール「依頼者は死後地獄に堕ちる」ということに対する感応性の問題で、例えば、老年期にある人の依頼は、翌日にでも自分が地獄に堕ちるリスクを抱えることを考えると、壮絶な恨みを持たなければならないはずで、多分、重すぎて作品化できなかったところでもあろう。
 ちなみに、最後の連作は、閻魔愛のプロフィールを知る上ではとても楽しめた、しかし、面白さとは別の点で考えさせられたのは、最終話の「かりぬい」である。

 そういえば、この作品全体で解決できないながら提唱しているテーゼは「復讐は悪なのか」だ。

 そして、2シリーズ(二籠)は、その点考えさせられる要素が多くなる、「黒の轍」「vの惨劇」「あのひとの記録」などは、1シリーズで指摘した、中年や老年の依頼が登場する、その本質は、やはり短い時間枠では難しいところだが、その点では、シリーズとして深化したと思う。そして、中途半端だが「この国のために」での政治的問題の取り組みは、興味があるところだ・・・それは、このシステムがあるならば、第二次世界大戦の戦中や戦後に(大変不謹慎だが)天皇を地獄送りにするという、究極の話が考えられるからだ(やはり、話が相当重くなるのでできないだろう)。
 この様なことから、まぁ顔を顰める人も居るだろうが、この地獄通信システムは、公(権力)に対する、庶民の対抗手段でもあるのだ、ブルジョアジーに対するプロレタリアートという、対置もできそうなシステムなのだ。
 話をすこし戻そう、2シリーズ(二籠)の秀逸は23話から最後まで、紅林拓真を生け贄とする集団ヒステリー状態についての連作だ、本作は確かにアニメだが、人間の本性とはどのようなものであろうか?余エスカレートさせずに、収束させたが、人間の「業」はあそこまで煽動してしまうと収まらないものだ。
 まぁ、平和な世の中だからできる話なのだが、こんなに「地獄」の権威が失墜したこと、その事については随分寂しい思いがする。

 ちなみに、3シリーズ(三鼎)は、ほとんど見ていないので、後日ということで・・・・

 そうそう、この地獄通信の契約事項の説明には、もう一項目入れて欲しかった、それは、話の内容から当然のことなのだが「一度依頼すると、二度依頼する事はできない」こと、すなわち、若い人にとっては、現在の障害は取り除かれるが、将来にわたって、更にひどい状況がくるかは不明だ、だから、その権利を留保することも必要だ・・・と暗に付け加えるべきだと思う。