110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

エコロジストのための経済学(小島寛之著)

 本書は、東洋経済新報社2006年刊行のもの。

 経済学で環境問題を取り扱うことは難しいことのようだが、著者はそれに取り組むとともに、経済学に詳しくない人にも理解できるようにと本書を著した。

 しかし、やはり難しい課題のようで、経済というものが、人間の社会、人間のコントロールの中で成り立つのに対して、環境は、その制御できる範囲を越えているのである。
 それは、一つには空間的なことであり、一つには時間的なことであるからだ(後世の人たちに悪い環境を残してしまう可能性)。
 さらに、悪いことに、環境問題はすべての人(人類)が、被害者でもあり、加害者でもあるというところが難しさを増している(人類が滅びれば、現在のような環境問題はなくなっていくはずだ)。
 著者は、経済学者の視点から、この環境問題をとりあげつつ、将来に向かっての経済学的な展望を語っているのだ。
 それは「専門家集団による管理」ということなのだが、これは、私の(本書の)読み間違いかもしれないのだが、それは、プラトンの示した哲人による国家の統治と趣旨は変わりないように思うのだがいかがだろうか?
 「限定合理性」という概念を提示し、イデア論を回避しているようだが、その場合は、確率による判断の信頼性をどれだけ高められるのだろうかいう疑問が沸いてくる。
 つい最近も、1000年に一度という自然の脅威にさらされ、大きな事故が発生したことを経験したばかりである。
 
 しかし、いつかはわからないが、将来において、科学的な手法で、本書でとりあげられたような環境問題を有効に解決できる理論が生まれる可能性はゼロではないであろう、ただし、その日まで人類という種が生き残れるかが問題だ。