110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ゲーム的リアリズムの誕生(東浩紀著)

 本書は講談社現代新書版。

 ポストモダンていうのは難しい考え方だと思う、そこに切り込んでいく著者の力量はなみなみならないものだ。本書では、ライトノベル美少女ゲームなどの概念を足場として、日本の小説(的なもの)を分析していく。
 私は本書の課題にはついていけない、現在の若い人たちは随分と高度な考え方を身近に感じていると感嘆するばかりだ。
 私として本書を咀嚼すると今ではあまり振り向かれない「哲学」の視点の復権であるように思う。
 それは、本書の最後の方に「実存」という言葉がふいに現れたことに着目したからだ。
 ポストモダンという現代性が、モダンな「実存哲学」に回帰する、いやリセットするということは起こり得るのだろうか?
 多元な未来のなかから一つの状況を選択するということと、そしてそれにより失うものがあるということはサルトルを思い出したし、逆に選択しないということの極致には、仏教の中道(色即是空空即是色)という考えを思い出した。
 しかし、哲学書のような抽象性(難しさ)はなく、恐ろしく洗練されたリアリズムがあるということが特筆されることのようだ。
 それは、神の視点(形而上学)から作品を作るということなのかもしれない。

 その先には?
 もういちどヒューマニズム論議があってもよさそうだが・・・

 まぁ、古い頭ではこの程度の考証だな。