110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

東京下町古本屋三十年(青木正美著)

 本書は青木書店昭和57年刊行のもの。
 ちなみに、発行者である青木書店は、著者の主催する古書店「青木書店」の自家出版であり、あの青木書店ではない。

 戦後から30年にわたる古本屋の経営について記された中に戦後の昭和という時代が偲ばれる。
 戦後のまだ貧しい時期には娯楽といえば映画や書籍しかなく、一冊の雑誌が古本として何回も人手を巡っていたという、それだけ雑誌だけでなく本全般が大事にされていた時代があったのだ。

 しかし、国がゆたかになると古本の扱いも変わってくる。

 本書が発行された昭和57年でも著者は活字離れを指摘していた、それからさらに30年後の現在はどうか?

 つい数年前まではBookOffには「本」があふれていた。
 しかし、そのBookOffも印刷物ならマンガ、そしてゲームや画像系にシフトしている、さらに、古着を扱い始めたところも出てきた。
 活字本が廃れる日が近いのかもしれない。
 それは不幸な事だ。
 例えば、本書のように特殊な本は、最初から評判を知っていて買い求めるのならば、Amazonで検索すれば良いだろう、しかし、ふらりと古本屋に行ってたまたま出会った本がおもしろかったという状況はなくなる。
 合理的な人は目的意識をもって本を購入される人にはAmazon式で買えば良い。
 しかし、私のように、意外な本と出会うこと、すなわち意外性を楽しむものにとっては、ますます住みにくくなってきたようだ。

 ちなみに、本書をAmazonで検索すると20件もヒットする、たかだか1000部発行なのだがその程度の市場評価なのだろうか?
 最安値は関東までの送料含めて294円、最高値は5,622円(同様に送料込み)であった。
 驚くべきは発行部数の2%がここにあることか な?